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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国の肉料理といえば
牛(
:ソ)・豚(
:トェジ)・鶏(
:タッ)が一般的ですが、
それ以外にも少数ながら犬(
:ケ)、雉(
:クォン)、鴨(
:オリ)、羊(
:ヤン)、兎(
:トッキ)、馬(
:マル)、鹿(
:サスム)などの肉が食用にされてきました。
今回のテーマは、
韓国でも近年人気が上昇している鴨肉についてです。
鴨には、
頭部が青緑色のマガモ(韓国語で
:チョンドゥンオリ)をはじめ、多くの野生種が存在します。
アヒルはマガモを食肉用に品種改良した家禽で、韓国語では家を意味するチプ(
)とオリ(
)の複合語、
チボリ(
)が正式名ですが、オリと総称されることも多くあります。
また、クセがあまりなく肉質が柔らかいことから日本でも食用に好まれているアイガモは、マガモとアヒルの交配種ですが、韓国ではそれらも含めて単にオリと呼ばれています。
現在は、鴨料理といえば韓国でもアイガモの肉がよく使われます。鶏に比べて鴨は大型で脂身が多く、臭みのあるのが特徴です。調理に先立ち、内臓や脂を入念に取り除いたり、水洗いや血抜きのほか焼酎に浸したり、焼酎を加えた水で一度茹でこぼすなど、臭みを取るための下処理に工夫が見られます。また、燻製にした商品も出回っています。
■ 韓国の鴨料理
オリペクスッ(
)鴨の薬膳スープ
内臓を抜いた一羽丸ごとの鴨もしくは骨ごとぶつ切りにした鴨肉を用意し、
かぶるくらいの水を注いで2時間ほどコトコトと煮込んだスープ
。高麗人蔘、黄耆、甘草、棗、にんにく、生姜などの漢方薬材とともに煮込むことが多く、滋養豊かな補養食とされています。
丸鶏を煮込んだサムゲタン(
)のように、お腹の中にもち米や漢方薬材を詰めて煮ることもあります。鴨肉のクセを消すために、しばしば焼酎などの酒を加えます。
。
オリタン(
)鴨鍋
骨ごとぶつ切りにして下処理した鴨肉をひたひたの水とともに鍋に入れ、味噌、おろしにんにく、おろし生姜、唐辛子、玉葱、長葱などの薬味をたっぷり加えてじっくり煮込んだ鍋料理。肉がほろりと骨からはずれるくらいに煮えたら、下ごしらえした蕗やずいきを入れてさらに煮た後、醤油や魚醤で味を調え、玉葱、葱、えごま粉、にら、えごまの葉などを加えて仕上げます。鴨肉を食べるときは、醤油、酢、ねり芥子、えごま粉、刻み唐辛子などを混ぜ合わせたタレにつけることもあります。味のなじんだ蕗やずいき、にらなども格別な味わいです。
オリプルコギ(
)鴨焼肉
薬味たっぷりのタレにつけ込んだ鴨肉の焼肉。飲食店では専用の鉄鍋や網で直火焼きするのが一般的ですが、
フライパンなどで炒めることもあります。玉葱や長葱、にら、えごまの葉、きのこなども加えて仕上げます。タレは醤油、
コチュジャンをベースに粉唐辛子、砂糖、水飴、酒、おろしにんにく、おろし生姜、おろし玉葱、胡椒などを混ぜ合わせて作ります。
豚肉にタレを揉みこんで焼く豚焼肉「チュムルロッ」(
)の鴨バージョンということで、
オリチュムルロッ(
)とも呼ばれます。
■ ユファンオリ(
:硫黄鴨)
韓国独特の鴨の食べ方に、ユファンオリ(
)といって、硫黄入りの餌で育てた鴨の料理があります。
鴨を飼育する中である一定期間、硫黄や漢方薬材を餌に混ぜて与えることにより、
鴨体内の解毒物質が増加してデトックス効果と免疫力の高い肉質が得られると言われています。
もともと、鴨肉は脂肪の融点が人間の体温より低いため摂取しても体外に排出されやすく、また不飽和脂肪酸や各種ビタミンを多く含むため、高品質のタンパク質を含む健康食品とされてきました。
そのような事由が重なって、ユファンオリは健康志向の観点から脚光を浴びているようです。
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鴨 (オリ)
エイ(ホンオ)
ずいき
コプチャン
エホバッ
みずだこ
青とうがらし
えごまの葉
豚皮と豚足
たんぽぽ
干しめんたい(プゴ)
トドッ(つるにんじん)
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