HOMEへ
韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国料理によく使われる独特な野菜に、
エホバッ(
)があります。エ(
)
は「未熟な」「幼い」を意味し、ホバッ(
)はかぼちゃをさします。日本語では「朝鮮かぼちゃ」「韓国かぼちゃ」などと訳されます。
エホバッはズッキーニと似た外見をしていますが、ズッキーニとは品種が異なり、
身が硬く締まっていてほんのりと甘味があるのが特徴です。韓国ではかぼちゃ(ホバッ)といえば、
丸いかぼちゃ(
:トゥングンホバッ)よりもエホバッのほうをさすことが多く、使用頻度の高いポピュラーな野菜というイメージがあります。
韓国料理においてエホバッは、チゲやスープの副材料として四季を通して使われるほか、主材料としても煮もの、炒めもの、和えもの、焼きものなど、さまざまに調理されます。エホバッの鮮やかな緑色と独特の歯ざわり、飽きのこないシンプルな味わい、皮ごと使えて火の通りが早く味のしみがよいことなどが、エホバッが単品でも手軽に美味しいおかずとなり、他の材料と合わせてもまた複合の味わいを演出するという、使い勝手の良さにつながっているようです。
そしてどの調理法の場合も、エホバッはグリーンが鮮やかで歯ごたえの残っているときに火を止めること、加熱しすぎないことがポイントになります。
■
エホバッ料理
・エホバッナムル(
)
エホバッの和えもの。
半月切りなどにしたエホバッをサッと茹でるか蒸して塩、薄口醤油、おろしにんにく、すりごま、ごま油などで和えます。唐辛子やみじん葱を加えたり、
アミの塩辛や魚醤を使うこともあります。ごま油のかわりにえごま油を使っても、また独特な味わいを楽しむことができます。
エホバッムッチム(
)、エホバッナムルムッチム(
)などということもあります。
・エホバッポックム(
)
エホバッ炒め。半月切りなどにしたエホバッをにんにくとともにごま油で炒め
、アミの塩辛や薄口醤油を加えて炒め上げます。生の赤唐辛子や青唐辛子を加えるとピリッと仕上がります。
切ったエホバッに軽く塩をふってしんなりさせ、水気を絞ってから炒めることもあります。エホバッナムル
(
)、エホバッナムルポックム(
)などと呼ぶこともあります。
・エホバッチム(
)
エホバッの蒸しもの。輪切りなどにしたエホバッをさっと蒸して器に並べ、醤油やおろしにんにく、粉唐辛子、すりごま、ごま油などを混ぜ合わせたヤンニョムジャン(薬味醤油)をかけていただきます。
あるいは、数センチに切ったエホバッの中をくり抜き、挽肉などを詰めて蒸し上げるタイプもあります。
・エホバッチョン(
)
エホバッの衣焼き。輪切りにしたエホバッに小麦粉と卵をまぶし、
油をひいたフライパンで両面焼きます。ヤンニョムチョガンジャン(薬味酢醤油)などをつけていただきます。
あるいは、細切りにしたエホバッと小麦粉生地を合わせて、
油をひいたフライパンでお好み焼きのように焼くタイプもあります。エホバップッチム(
)、
エホバップッチムゲ(
)などともいいます。
■
エホバッの切干し
エホバッのもう一つの顔に「切干し」があることも、特筆すべき点です。
エホバッを数ミリ厚さの輪切りにして干したもので、韓国語ではホバッコジ(
)、
マルリンホバッ(
)、
コンホバッ(
)などと呼ばれています。
切干しエホバッの食べ方としては、ナムルにするのが一般的です。まず水かぬるま湯で戻し、水をとりかえながら何度も洗って独特の臭みとえぐみを抜きます。米のとぎ汁で戻すこともあります。最後に手でしっかり水気を絞った後、薄口醤油、おろしにんにく、みじん葱、ごま油などで和え、フライパンで炒めて仕上げます。炒めた後、だし汁を少し注いで炒め煮にすることもあります。
もともと朝鮮半島では、エホバッをはじめ、
大根や大根葉、茄子、白山菊、ぜんまい、わらびなどさまざまな野菜・山菜を旬の時期に収穫後、切干しにする文化があります。そして、
旧暦1月15日にはその切干し野菜をそれぞれナムルにして食べる風習がありました。旧暦1月15日すなわち正月後の初満月の日を「チョンウォル
テボルム」(
)ということから、
この料理はテボルムナムル(
)と呼ばれています。
最新のバックナンバーはこちらからもご覧いただけます。
エイ(ホンオ)
ずいき
コプチャン
エホバッ
みずだこ
青とうがらし
えごまの葉
豚皮と豚足
たんぽぽ
干しめんたい(プゴ)
トドッ(つるにんじん)
2006年から掲載しているキーワードバックナンバー一覧が見れます。
TOPへ