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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
朝鮮半島の独特な食材で古くから料理によく使われてきたものに、
プゴ(
)と呼ばれる、スケソウダラの乾物があります。
日本語では「干しめんたい」「干し鱈[だら]」などと訳されますが、日本の鯵[あじ]や鯖[さば]、ホッケなどの干物が柔らかい半干しであるのとはちがい、
プゴは繊維がカラカラになるまで完全に干したものです。
良質なプゴを作るのに必要なものは、夜間の厳しい冷え込みと、
昼間の日差し、寒風、雪である言われます。プゴの産地として名高い江原道[カンウォンド]のインジェ(麟蹄:
)、ピョンチャン(平昌:
)などでは、夜間の最低気温マイナス15℃、
昼間の最高気温2℃という気温差の中を毎日行き来しながら自然凍結・解凍・乾燥を繰り返し、太陽と風と雪を浴びて、
ファンテ(黄太:
)と呼ばれる最高級のプゴができあがります。
寒流魚であるスケソウダラは朝鮮半島東側の近海で多く捕獲されてきたため、
上記のほかに朝鮮半島最北部のウォンサン(元山:
)、ミョンチョン(明川:
)なども古くからプゴの産地として名を馳せてきました。
特にミョンチョンは、スケソウダラの韓国名であるミョンテ(明太:
)の語源にもなっています。
しかし、温暖化の進む近年では、朝鮮半島沿岸でのスケソウダラ捕獲量が急減し、ロシアのベーリング海沿岸やカムチャツカ半島で捕獲されたスケソウダラを江原道でプゴに加工していると言われます。
鱈には大きく真鱈[まだら](
:テグ:大口)と助惣鱈[すけそうだら](
:ミョンテ:明太)がありますが、特にスケソウダラについては、
朝鮮半島において捕獲季節や加工法によって、あるいは地方によって様々な名称がつけられ、余すところなく食べ尽くされてきました。
名称の多様さは、朝鮮半島におけるスケソウダラの存在の大きさを示すものといえましょう。
■
スケソウダラのいろいろな名称
センテ(
:生太)
生のスケソウダラ。
プゴ(
:北魚)
凍結乾燥させたスケソウダラ。別名コンテ(
:乾太)。 基本的には姿のまま乾燥させますが、
開いて乾燥させたプゴポ(
)、それをさらに細切りにしたプゴチェ(
)などもあります。
ファンテ(
:黄太)
プゴの一種で、身つきのよい新鮮なスケソウダラから作られた最高級品。身が厚く弾力があり、黄金色を帯びているのが特徴です。
トンテ(
:凍太)
冬に獲ってそのまま丸ごと凍結させたスケソウダラ。
コダリ(
)
はらわたとエラを取り除き半干ししたスケソウダラ。
ノガリ(
)
スケソウダラの稚魚。
ペッテ(
:白太)
スケソウダラを低温で昼夜の温度差なく乾燥させた、仕上がりの白っぽいもの。
モッテ(
:墨太)
スケソウダラを温暖な場所で乾燥させた、仕上がりの黒っぽいもの。
■
プゴを使った韓国料理
プゴクッ(
、
)
干し鱈のスープ。水で戻したプゴをごま油で炒め、水を加えて大根や豆腐とともに醤油や魚醤で味つけした素朴なスープ。
プゴムッチム(
)
干し鱈の薬味和え。プゴポムッチム(
)、
プゴチェムッチム(
)とも呼ばれます。細く切るか手で裂いて水で戻したプゴを、コチュジャン、おろしにんにく、ごま油、醤油などのヤンニョムで和えて作ります。
プゴクイ(
)
干し鱈の薬味焼き。戻したプゴにヤンニョムを塗って焼き上げます。
プゴチム(
)
干し鱈の薬味蒸し。戻したプゴにヤンニョムを塗って蒸し上げます。
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