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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
薬食同源を誇る朝鮮半島の食文化において、古くから大切にされてきたサンナムル(
:山菜)のひとつに、
トドッ(
:つるにんじん)があります。
トドッはつる性の多年草で、塊根と呼ばれる太い根の部分を食用にします。
有効成分サポニンやカルシウムを多く含むことから、インサム(
:高麗人蔘)、
トラジ(
:桔梗の根)などと並ぶトップレベルの健康食品・民間薬材として調理され、
また成分を煎じたり抽出して利用されてきました。
古文献を紐解くと、宋の使臣による高麗訪問記『高麗図経』(1124年)に「官で日々供されるナムルのひとつにトドッがあり、大きくて柔らかく美味しい。薬用ではなく食用にしている」という記述が、また李氏朝鮮王朝時代の農業書『増補山林経済』(1766年)には「トドッを2月に植え替える」などの記述が見られ、朝鮮半島で古くからトドッが食べられており、天然物のトドッを採取するだけでなく栽培されていたことも伺えます。
■
トドッの調理方法
トドッの調理方法や食べ方には次のようなものがあります。日本ではあまりなじみのないトドッですが、ひげ根の多い塊根は表面の凹凸が多く、また硬い繊維質でできているため、調理に先立ち土をきれいに洗い落とし、皮をむき、棒で叩いて繊維をほぐしたり、手で裂くなど、手間のかかる下ごしらえが必要です。また、トドッは独特の酸味と苦味があるため、料理によっては塩もみ、下茹で、水に晒したり下焼きするなど、もうひと手間かけて食べやすくすることも少なくありません。
一見地味なトドッですが、そこまで手間をかけてでも、他の何物にも代えがたい魅力ある食材なのだと言えましょう。
トドッムッチム(
):つるにんじんの薬味和え
下ごしらえしたトドッを、コチュジャン、粉唐辛子、醤油、砂糖、水飴、ごま油、酢、すりごま、おろしにんにく、みじん葱などを混ぜ合わせたヤンニョムジャンで和えます。トドッ独特のクセを抜くために、塩もみや塩水につけたり、さっと茹でたり、ごま油で炒めておくこともあります。
トドックイ(
):つるにんじんの薬味焼き
下ごしらえしたトドッをフライパンにごま油をひいて下焼きした後、コチュジャン、粉唐辛子、醤油、砂糖、水飴、おろしにんにくなどを混ぜ合わせたヤンニョムを塗って両面焼き上げます。
トドッチャンアチ(
):つるにんじんの唐辛子味噌漬け
下ごしらえしたトドッをコチュジャン、醤油、粉唐辛子、水飴、酒、だし汁などを混ぜ合わせたヤンニョムで和え、密閉容器に隙間なく詰めて長期保存する常備菜。ヤンニョムに蜂蜜やオリゴ糖、梅シロップ、魚醤などを加えることもあります。
トドッチョングァ(
):つるにんじんの甘露煮
下ごしらえしたトドッを水、砂糖、水飴、蜂蜜などでコトコトと水分がなくなるまで照りよく煮詰めた後、表面を乾燥させます。保存のきく高級な間食です。
トドッスル(
)またはトドッチュ(
):つるにんじん酒
トドッをブラシで擦りながらよく水洗いして乾かした後、細長い瓶に入れて30〜35度の焼酎を注ぎ、長期間保存します。好みで砂糖、蜂蜜などを加えます。アルコール度数の高い酒を使うことにより、薬効成分がよく抽出されます。
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