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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
日本でもすっかりおなじみになった韓国式海苔巻き、キムパプ(
)。
韓国では家庭でもよく手作りされますが、街角の「キムパプチプ」(
)と呼ばれるキムパプ専門の零細店舗や、「プンシッチョム」(
:粉食店)と呼ばれるラーメン・餃子・キムパプ・定食などを出すファストフード店、あるいは大型ショッピング店のフードコート、コンビニなどでも多様なキムパプを目にすることができ、いまや韓国の国民的軽食となった感があります。
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キムパプの特徴
キムパプは日本の海苔巻き(太巻き)と似ていますが、日本の海苔巻きとちがう点として一般に次のような傾向が挙げられます。
@ご飯の味つけ
酢飯にせず、ごま油やごま、塩で薄く味つけする程度。何も味つけしない場合もある。一方で、酢飯にするレシピもある。
Aご飯と具のバランス
ご飯が薄めで具だくさん。具の種類は多く、棒切り、千切り、平たい形など様々な形態で彩り鮮やか。
B具の種類
ポピュラーなものでは、
卵焼き、にんじん、ほうれん草、たくあん、きゅうり、カニ蒲鉾など。ほかに、オデン(
)
と呼ばれる薄型さつま揚げ、キムチ、ツナ、ソーセージ、肉のそぼろ、えごまの葉、スライスチーズ、ごぼう、ぜんまいなども組み合わせて使われる。
材料によって茹でる、煮る、炒めるなどの下ごしらえをし、下味をつけておく。キムパプ仕様に細長く切り揃えられたカニ蒲鉾、たくあん、さつま揚げ、ソーセージなども市販されている。
C表面にごま・ごま油
できあがったキムパプの表面にごま油が塗られ、いりごまがふりかけられている。ごま油で黒光りした海苔と白いごま、香ばしい匂いがインパクトを放つ。
D一切れが小さめ
日本の海苔巻きと比べると巻きあがりの直径が小さめで、切り方も薄めであることが多く、一口でぱくりと食べやすい。
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キムパプのルーツ
キムパプのルーツについては、韓国では日本起源説と韓国起源説の両方があるようです。
日本統治時代(1910〜1945)を前後して、朝鮮半島と日本では相互にさまざまな文物の往来がありましたが、当時朝鮮半島随一の新聞であった「東亜日報」の1930年3月7日版に、「
」(ノリマギスシ)という料理名ですし飯に干し椎茸、卵焼き、でんぶをのせて浅草海苔で巻く料理が紹介されており、当時の朝鮮半島における日本の海苔巻きの存在が確認できます。
一方、海苔の食用に関する日本よりも古い文献が朝鮮半島に存在すること、包んだり巻いたりして食べる食文化が朝鮮半島に古くからあることなどから、ご飯を海苔で巻いて食べる食べ方が早い時期に朝鮮半島から日本へ渡り、それが日本式海苔巻きという形になって日本統治時代に朝鮮半島へ再びもたらされた、というのが韓国起源説の骨子となっています。
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名物、チュンムキムパプ
慶尚南道[キョンサンナムド]
南端の港町、統営[トンヨン]には、独特なスタイルの「チュンムキムパプ」(
:忠武キムパプ)が名物料理として伝わっています。
チュンムキムパプとは、
味のついていないご飯を小型の海苔で細巻きにした、一口サイズの具なし海苔巻きです。それに、甘酸っぱい大根キムチとオジンオムッチム(
:イカの甘辛和え)を3点セットにして一皿に盛り合わせたものが、チュンムキムパプの定番です。
チュンムキムパプは、日本統治からの解放直後に、日本から帰国した韓国人女性が忠武[チュンム]市(現在の統営市)で旅客船の乗客相手にキムパプなどを売り始めたことが発端であったと言われます。夏場気温の高い統営で、傷みやすい具は入れず白飯だけを海苔で巻き、おかずを別に添えたのが好評で、漁師のお弁当としてもそのスタイルが取り入れられ、次第に広まっていったと言われます。
その後、1981年にソウルの汝矣島[ヨイド]で催されたイベントでの出店を契機に、チュンムキムパプは全国的に知れ渡るようになり、ご当地・統営にはチュンムキムパプの店が軒を連ねる「チュンムキムパプ通り」が形成されるに至っています。
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