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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国料理のスープには辛いものが多くありますが、
中にはまったく辛くないものもあり、そのひとつがコムタン(
)です。コムタンのコム(
)は「水で煮込む」という意味の動詞「コダ」(
)の名詞形、タン(
:湯)はスープを意味し、牛のさまざまな部位(骨、筋、肉、内臓類)を水から長時間煮込んだ、
塩味の白濁スープです。「タン」と同じくスープを意味する名詞「クッ」(
)をつけて、コムクッ(
)と呼ぶこともあります。
コムタンの主材料となる牛の部位は、足骨(
:サゴル)、あばら骨(
:カルビピョ)、その他の雑骨(
:チャッピョ)、尻尾(
:コリ)、スネ肉(
:サテ)、前足腹側の肉(
:ヤンジモリ)、小腸(
:コプチャン)などがあり、単品あるいは何種類か取り合わせて煮込んでいきます。
水煮というシンプルな調理法だけに、どの部位も水洗い後しばらく水につけて血抜きをしたり、さっと熱湯にくぐらせたり、一度茹でこぼして洗うなど、牛臭さを抑えてきれいな白濁スープに仕上がるよう工夫します。
■
コムタンの作り方(一般的な方法)
@
主材料となる牛の各部位を水洗いし半日ほど水につけた後、新しい水とともに大鍋に入れて火にかけます。沸騰したら一度水を捨て、牛や鍋についたアクを洗い流します。
A
牛を鍋に戻し、新しい水をたっぷり入れて再び火にかけます。沸騰したらアクをとって火を弱め、蓋をしてポコポコと沸き続けるような火加減で煮ていきます。途中で酒や生姜、葱などを加えることもあります。煮る時間は牛の部位や大きさによってちがいますが、骨は数時間以上かけてじっくり煮出し、肉類は煮崩れたりカスカスにならない程度に1〜2時間ほど煮て引き上げます。
B
乳白色に濁ったスープがとれたら、肉類を薄切りまたは繊維に沿って裂くなどし、好みで塩、胡椒、おろしにんにくなどで下味をつけます。スープは一度冷まして上に固まった脂を取り除くこともあります。
C
鍋に
B
の肉類と白濁スープを入れて火にかけ、沸騰したら鉢などの器によそい、小口葱をかけて食卓へ。好みで韓国春雨や小麦粉の細麺を入れることもあり、その場合は下茹でしておいたものを器に入れ、上からアツアツのスープと肉をかけます。
※
スープに塩味はついていなく、食べる人が食卓にて塩・胡椒など適量入れて味を調えます。
※
飲食店のようにトゥッペギ(
:土鍋)などで銘々に提供する場合は、トゥッペギに春雨や麺、肉片、スープを入れて火にかけ、
沸いたら小口葱を入れて食卓へ出します。
■
さまざまな白濁スープ
コムタンのように牛のさまざまな部位を煮込んだ塩味の白濁スープは、高麗時代後期に朝鮮半島へ侵攻したモンゴル帝国からもたらされた調理法であると言われています。
このスープは、主材料となる牛の部位によって様々な料理名で呼ばれており、主材料が骨か筋か肉かによって、同じ牛でも料理の味やイメージに違いがあり、朝鮮半島における牛料理の層の厚さが感じられます。比較的ポピュラーなものでは、次のようなスープがあります。
トガニタン(
):牛膝のスープ
関節回りの軟骨からゼラチン質が溶け出た、とろりとコクのあるスープ。ゼラチン質の豊富な牛アキレス腱を一緒に煮ることもあります。
サゴルタン(
):牛足骨のスープ
漢字で「四骨湯」と書きます。サゴルコムタン(
)とも呼ばれ、ごく一般的なコムタンのひとつです。足骨以外にスネやブリスケなどの肉も一緒に煮込むことがよくあります。
コリコムタン(
):牛テールのスープ
尻尾の部位を関節ごとに切り離して煮込みます。テール独特の風味漂うスープと、骨からほろりと取れる肉の味わいが身上で、コムタンの王道といえましょう。
ソルロンタン(
):牛各部位のスープ
足骨や雑骨を主材料とし、頭や雑肉片、内臓類などもしばしば入れて煮込みます。韓国を代表する大衆的なスープとして人気があります。
これらのスープには独特な食べ方があります。
まず、上述のとおりスープ自体には味がついていなく、
食べる人が自分の好みで塩・胡椒などを混ぜ入れて食べることです。食卓には塩・胡椒・刻み葱・唐辛子などの薬味が添えられています。
そして、これらのスープはご飯とワンセットで提供され、ご飯を最初から、
あるいは途中からスープに入れて混ぜて食べるのが一般的です。また、カットゥギ(
:大根キムチ)との相性がよく、必ずといってよいほど添えられています。
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