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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
サムゲタン(
:蔘鶏湯)は、丸鶏のお腹に高麗人蔘ともち米、にんにく、棗[なつめ]などを詰めて、漢方薬材とともに長時間煮込んだ塩味のスープ。
ケサムタン(
:鶏蔘湯)とも呼ばれます。
韓国伝統料理の中でもサムゲタンは、とりわけ滋養に富んだ食べごたえのある逸品です。韓国料理を代表するような豪華なスープですが、材料を準備すれば家庭でも比較的失敗なく作れる料理でもあります。
■
サムゲタンの作り方(一般的な調理法)
@丸鶏の下ごしらえ
羽をむしり頭、足先を落とし内臓を抜いた丸鶏を用意します。この状態で冷凍された商品も流通しており、それを使う場合は1日かけて中心まで解凍させます。
鶏の外側と内側を水できれいに洗い、残った毛や尻回りの余分な脂を取り除きます。サムゲタンは一人前一羽が基本のため1s未満の小さな雛鶏がよく使われますが、大きな親鶏で作ったものも濃厚な味わいがあります。
Aお腹に具を詰める
@の丸鶏の足を上向きにして置き、お尻からもち米、高麗人蔘、棗、にんにく、銀杏、栗などを詰めていきます。最後に足の付け根に切り込みを入れ、両足を交差させて切り込みに足を差し込んで、具がこぼれ出ないように塞ぎます。つま楊枝などで固定することもあります。
Bその他の漢方薬材の準備
サムゲタンに使う漢方薬材は、Aの高麗人蔘(
:インサム)のほか、黄耆(
:ファンギ)や甘草(
:カムチョ)、五加皮(
:オガピ)、
(
:チョングン)、ハリギリ(
:オムナム)、生姜(
:センガン)などがあります。これらは、あらかじめ水からコトコトと煎じて成分を十分に煮出しておきますが、
場合によっては鶏を煮るときに一緒に入れて同時進行で煮込むこともあります。
C鶏を煮る
Bの煎じ汁にAの鶏を入れて火にかけ、沸騰後アクをとって弱火で1〜2時間ゆっくり煮ます。途中、酒や長葱を加えることもあります。煮る時間は、鶏の大きさや硬さによって調節します。
D仕上げ
ほどよく煮えたら、塩・胡椒・刻み葱などで味を調えます。また、これらは仕上げの段階で入れずに、食べるときに各自で好みに合わせて入れる場合もあります。また、こうしてスープ全体に味がついている場合でも、さらに鶏肉を食べるときに、小皿に入った塩・胡椒などをつけて食べることもしばしばあります。
■ 三伏
[サムボッ]
の補身
[ポシン]
料理、サムゲタン
韓国では年間を通して食べられているサムゲタンですが
、とりわけ暑さで食欲・体力の落ちる夏場に滋養豊かで消化吸収のよい夏バテ防止料理として、
サムゲタンは筆頭に挙げられます。韓国では、このような滋養・強壮料理のことを「補陽食」(
:ポヤンシッ) あるいは「補身飲食」(
:ポシンウムシッ)と呼びます。
韓国の歳時習俗では
、暦の上で夏至を過ぎて3回目の庚[かのえ]の日を初伏(チョボッ:
)、4回目の庚の日を中伏(チュンボッ:
)、
立秋を過ぎて最初の庚の日を末伏(マルボッ:
)といい、
初伏から末伏までの20日間を三伏(
:サムボッ)と呼んでいます。三伏は一年中で最も暑さの厳しい時期にあたり、
暑気払いに食べる「補陽食」「補身飲食」が、このサムゲタンというわけです。サムゲタン以外にも、
犬肉を煮込んだスープ「ケジャンクッ」(
)別名「補身湯」(ポシンタン:
)や、
牛肉と野菜を煮込んだスープ「ユッケジャン」(
)、どじょうと野菜を煮込んだスープ「チュオタン」(
)などが、三伏の補陽食として有名です。
ちなみに、補陽食は三伏の季節食としてだけでなく、虚弱体質の人の体質向上や、産後の女性の養生に、あるいは体調を崩したときの食べ物として、年間を通して日常生活の中でしばしば登場する料理でもあります。
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