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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
小麦粉の生地で、野菜や肉の具(餡)を包んだ中国起源の料理に「包子」(パオズ)、「餃子」(チャオズ)、「饅頭」(マントゥ)などと呼ばれるものがあります。広大で多民族国家の中国では、地域や民族によって料理名の定義が曖昧な部分もありますが、一般的に次のような料理のイメージと理解することができます。
まず「包子」(パオズ)は、発酵させた柔らかい小麦粉生地に、肉や野菜の餡を包んで蒸しあげたもので、日本でこれに近い食べ物として「肉まん」「中華まん」などがあります。
次に「餃子」(チャオズ)は、薄く延ばした小麦粉の丸い皮で肉や野菜の餡を包んだもので、ひだを寄せるなどして三日月形に細長く包むのが基本形です。このタイプは日本でも「餃子」(ぎょうざ)と呼ばれていますが、日本では油で焼いた「焼き餃子」が主流なのに対し、中国では茹でた「水餃子」が主流で、「焼き餃子」や「蒸し餃子」は少数派といえます。
最後に「饅頭」(マントゥ)は、「包子」の餡なしタイプ、すなわち酵母で発酵させた小麦粉生地を蒸した「蒸しパン」のような食べ物です。生地はシンプルなものから、油や砂糖を加えたほんのり甘いものや、スープでこねた薄い塩味のものなど、ヴァリエーションがあります。
■ 朝鮮半島にもたらされた中国版「饅頭」
さて、中国にルーツをもつこれらの料理は、朝鮮半島にも早くからもたらされ、さまざまなヴァリエーションが生まれました。
いつごろから朝鮮半島に伝わったのか明確ではありませんが、李氏朝鮮王朝時代(1392〜1897)の料理書『飲食知味方』や『是議全書』『閨閣叢書』、あるいは当時の宮中宴会の記録書『儀軌』に、この類の料理に該当する以下のような朝鮮語が散見されます。
サンファ
(
)
漢字表記は「霜花」「雙花」など。
発酵させた小麦粉生地を蒸した、中国版「饅頭」状の食べ物の古称。サンファビョン(
:霜花餅)とも呼ばれた。
キス
(
)
漢字表記は「起溲」。酒の力で発酵させた小麦粉生地の食べ物の古称。
スギョイ
(
)
漢字表記は「水餃衣」。水餃子の古称。薄く延ばした小麦粉生地の皮で具を包み、茹でるか蒸して酢醤油で食べる。
ピョンス
(
)
漢字表記は「片水」。スギョイすなわち水餃子の一種だが
、四角形の皮で具を包んで三角形に仕上げるのが特徴。
卞氏饅頭(
:ピョンシマンドゥ)、
食
(
:ピョンシッ)、餅匙(
:ピョンシ)などが語源と言われる。
マンドゥ
(
)
漢字表記は「饅頭」「曼頭」など。古くは「饅頭果」(
:マドゥグァ)とも呼ばれ、具の入っていない小麦粉生地を蒸したものが主流であった。
その後、平安道(
:ピョンアンド)、黄海道(
:ファンヘド)など北部地方を中心に肉やもやし、豆腐、キムチ、
春雨などの具がたっぷり入った大ぶりのマンドゥがよく作られるようになり、お正月に食べるマンドゥクッ(
,
:マンドゥ入りのスープ)がこの地域の郷土料理となっている。
■ 近代以降のマンドゥ
その後、19世紀中ごろになると当時の清国、とりわけ山東半島から朝鮮半島へ移住する中国人が増え、彼らのもたらした新たなマンドゥが急速に広まっていきました。
当時は「チュングッチプ」(
:中国家)と呼ばれる、中国人の経営する中国料理屋が主流でしたが、日本統治時代を経て解放後の食糧難の時代になると
、韓国では安価なアメリカ産小麦粉の流入で「プンシッチョム」(
:粉食店)と呼ばれる、小麦粉を使った、韓国人の経営する大衆食堂が人気を呼ぶようになります。
粉食店で出てくるマンドゥ類は餃子タイプのもので、調理法によって次のようなものがあります。
チンマンドゥ
(
)
蒸しマンドゥ。刻んだ野菜や肉の餡を小麦粉の生地で包み、蒸しあげたもの。湯気の立つ蒸籠から取り出したアツアツを、薬味の入った酢醤油をつけて食べる。焼売のようなタイプもある。
ムルマンドゥ
(
)
茹でマンドゥ。お湯で茹でた水餃子状のマンドゥ。同様に薬味酢醤油で食べる。
チンパン
(
)
蒸しパン。具の入った肉まん状のものと、具の入っていない中国式饅頭がある。
クンマンドゥ
(
)
揚げマンドゥ。直訳すると「焼きマンドゥ」だが、実際には油で全体を揚げた「揚げ餃子」状のもの。
マンドゥクッ
(
,
)
マンドゥ入りスープ。上述の大ぶりなマンドゥが入ったものは、特に「平安道式(ピョンアンドシッ)マンドゥクッ」と呼ばれるが、普通サイズのマンドゥも多用される。
粉食店の様相は時代とともに変わり、現在ではキムパプ(
:海苔巻き)やラミョン(
:インスタントラーメン)、カルグクス(
:細めの煮うどん)、トッポッキ(
:餅炒め)、オデン(
:おでん)、ティギム(
:揚げ物)など多様なメニューを揃えた大衆的なファストフード店、もしくは市場の中の簡易食堂のような店が多いようです。
がありますが、近年は20%もしくは17〜18%といった低アルコール焼酎が主流となっています。
低度数化している背景には、
健康志向や、ストレートで盃を一気に飲み干す飲み方が影響しているものと思われます。
また、焼酎の瓶が近年小型化しているのも目を引きます。一度開けたら飲み切る、足りなければ何本でも開ける、といった飲み方に韓国の国民性が表れているようでもあります。
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