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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国料理にしばしば登場する春雨。春雨は韓国語で「タンミョン」(
)
と言い、漢字では「唐麺」と書きます。
春雨の発祥は中国で、約1000年前から作られていたと言われます。中国では「粉絲」または「粉条」と呼ばれ、緑豆やえんどう豆の澱粉を湯でこね、その柔らかい生地を無数の小さな穴から熱湯に細く流し落として茹で、流水にさらしてから乾燥または凍結乾燥させて作ります。
中国発祥の「粉絲」は、東は朝鮮半島や日本、西はベトナム、タイ、インドネシアなどアジア各地に伝わり、使われる材料も緑豆やえんどう豆以外にじゃがいも、さつまいも、とうもろこし、タピオカ澱粉など地域によってさまざまです。
ちなみに「春雨」という日本での呼び名は、生地が細長くサーッと熱湯に流れ落ちる様が春の雨のようだということからつけられたと言われます。
■ 韓国のタンミョン
朝鮮半島におけるタンミョンの歴史を見ると、日本統治時代初期である1910〜1920年代に沙里院[サリウォン](黄海道)、平壌[ピョンヤン]、仁川[インチョン]などにタンミョン製造工場が建てられており、その頃から朝鮮半島でタンミョン製造が始まったものと思われます。山東省をはじめとする中国(清)から朝鮮半島への移住者が多かった当時、彼らのもたらした中国料理とともにタンミョン製造が普及していったことは想像に難くありません。
韓国のタンミョンは、かつては緑豆澱粉を材料とするものが多かったようですが、近年ではさつまいも澱粉で作るのが主流です。緑豆澱粉で作る細く透明な中国の「粉絲」と比べると、韓国のタンミョンは灰色を帯びて太く硬く、モチモチとしたコシの強さが特徴です。
乾物であるタンミョンは、戻してから料理に使うものですが、戻し方は料理や好みによって異なります。たいてい、熱湯の入った鍋で1〜2分下茹でして冷水に取りますが、茹でる前に水やぬるま湯につけておく場合もあり、茹で時間もさまざまです。また、水につけておいたタンミョンを、そのまま下茹でせずじかに料理に入れる場合もあります。
熱い料理か冷たい料理か、できたてを食べるのかどうか、味のしみ具合はどうするか、モチモチ感をどのくらいに仕上げるのか、などを考えて戻し方を工夫します。
■ タンミョンを使った料理
タンミョンを主材料とした韓国料理には、次のようなものがあります。
・チャプチェ(
:雑菜)。
タンミョンに細切りのにんじん、玉ねぎ、椎茸、青菜、赤ピーマン、さやえんどう、牛肉などを炒め合わせた一品料理。少し甘い醤油味とごま油の香りがベースになった、辛くない料理。
・ネンジャプチェ(
:冷雑菜)。
いわゆる春雨サラダ。タンミョンに細切りにした各種の具を盛り合わせ、酢醤油ベースのタレをかけて食べる。具にはきゅうり、玉ねぎ、にんじん、椎茸、なす、赤ピーマンなどの野菜のほか、茹で鶏、カニかまぼこ、錦糸卵なども使われ、下ごしらえの必要な材料は茹でたり炒めたりしておく。
・チャプチェバプ(
)。
チャプチェごはん。少し深みのある器に、ご飯とチャプチェを半分ずつカレーライスのように盛りつけた、韓国の中華料理店で定番の大衆料理。このときのチャプチェは生姜やオイスターソース、水溶き澱粉などを使って中国式に仕上げる。
タンミョンを副材料として使う料理には、次のようなものがあります。
・カルビタン(
:牛あばら肉のスープ)、
ソルロンタン(
:牛の各部位のスープ)などのスープ料理。
できあがったスープに、具のひとつとして最後に加える。
・プルコギ(
:牛肉の甘辛焼き)、
チムタッ(
:鶏と野菜の甘辛煮)、チョンゴル(
:肉野菜各種の甘辛鍋)など、味が濃くて汁のあるおかずや鍋料理。
具のひとつとして加え、加熱しながら煮汁をよくしみこませる。
・マンドゥ(
:餃子)、
スンデ(
:腸詰め)、キムマリ ティギム(
:海苔で巻いた揚げ物)などの中身に。
短く刻み他の材料と合わせて入れる。元来中身としてよく使われる肉やもち米、野菜などに比べて安価で使いやすく、増量に適している。
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