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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国料理における野菜の豊富さは言を俟ちませんが、中でも野菜の漬物や和え物の種類の多さ、食卓に上る頻度の高さは、豊富な副菜を携える韓国食文化の一側面といえましょう。
今回は、豊富な韓国の副菜の中でも、生野菜をヤンニョム(
:薬味香辛料)で和えた「コッチョリ」(
)と「チョレギ」(
)について見ていきましょう。
■ コッチョリ (
)
コッチョリのコッ(
)は「表面」「外面」を意味し、チョリ(
)は「漬けること」「漬けたもの」を意味します。つまりコッチョリとは、
表面だけ漬かったもの、「即席漬け」「浅漬け」をさします。
コッチョリのポピュラーなものでは、
白菜を塩漬けしてからヤンニョムで和えた
(ペチュコッチョリ)
があります。これは外国人から見ると、白菜キムチそのものに見えますが、
元来「キムチ」とは長期保存を前提とした漬物=発酵食品をさすため、ヤンニョムで和えただけのもの、
漬けたてのものは「キムチ」と呼ばず「コッチョリ」と呼び分けられるのです。
また、白菜キムチとして保存性を持たせるためには、白菜を半割りまたは1/4に切るなど、
ある程度大きなかたまりで漬ける必要がありますが、コッチョリのように白菜を最初からバラバラにして作った場合、
味はまんべんなく行きわたる一方で、保存がきかず短期間で食べきることが前提となります。
このあたりが、「コッチョリ」と「キムチ」の境界線といえましょう。
白菜の中でもよくコッチョリに使われる品種として、
「ポムドンベチュ」(
)と「アルベチュ」(
)があります。
ポムドンベチュは春に収穫される品種で、小型で黄緑色の葉がターツァイ状に広がった独特な形をしています。
アルベチュは、一般の白菜を手のひらサイズにしたようなミニ白菜です。
どちらも、葉をバラすだけでほどよい薄さとサイズの葉が得られ、
ヤンニョムの絡み具合や食感的にみてもコッチョリに大変適した野菜であることがわかります。
また、
白菜以外ではサンチュ、にら、えごまの葉などもコッチョリにされ、それぞれサンチュコッチョリ(
)、プチュコッチョリ(
)、ケンニプコッチョリ(
)と呼ばれています。
そして、コッチョリのヤンニョムの配合を見ると、荒挽きや粉挽きの唐辛子、にんにく、生姜、魚醤、アミの塩辛、砂糖、それに刻んだ葱や玉ねぎ、にらを加えるなど、キムチのヤンニョムと似ていることがわかります。
■ チョレギ (
)
近年、
日本でも「チョレギサラダ」という言葉を耳にするようになりましたが、「チョレギ」(
)とはコッチョリ同様、
野菜を生のままヤンニョムで和えた料理のひとつです。チョレギはコッチョリのチョリ(
)と同じく、「漬ける」を意味する動詞「チョリダ」(
)
に由来する料理名で、慶尚道方言では「チェレギ」(
)と言うこともあります。
白菜がポピュラーだったコッチョリに対して、
チョレギの主材料となるのはサンチュ(
)が圧倒的に多く、
そこにわかめや刻んだ葱、玉葱、大根、梨などが加えられることもあります。
また、
サンチュ以外では葱、にら、白菜、大根、きゅうりなどもチョレギにされ、それぞれパチョレギ(
)、プチュチョレギ(
)、ペチュチョレギ(
)、ムウチョレギ(
)、オイチョレギ(
)などと呼ばれます。
チョレギのヤンニョムとしては、しょうゆをベースに、ごま油、粉唐辛子、にんにく、葱、ごま、胡椒、酢、砂糖などを混ぜたものが一般的です。ほかに、オリゴ糖や梅シロップ、蜂蜜、魚醤などを加えることもあります。
そして、これらの料理はしばしば、「和え物」を意味する「ムッチム」(
)や、「サラダ」を意味する「セッロドゥ」(
)などとも呼ばれるとことがあります。
たとえばサンチュコッチョリ(
)の場合、
サンチュムッチム(
)、サンチュセッロドゥ(
)などとも呼ばれます。
このあたりが外国人にはわかりづらいところでもありますが、
チョレギのヤンニョムを和え物の合わせ調味料、あるいはサラダのドレッシングと考えれば、調理法の共通点を見出すことができるのではないでしょうか。
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