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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国語で餅のことを「
」(tok)といいます。カタカナでは「トッ」あるいは「トク」などと書かれますが、韓国語の音韻体系上「終声」と呼ばれる最後の子音kは
、英単語末尾のkなどとちがって完全な無声音となるため、
それをカタカナで表記しようとすると、発音重視で「ッ」と書くか、文字重視で「ク」と書くかで分かれ、
実際には両方の表記が混在しています。
一方、それと似た韓国語に、
韓国式雑煮(餅スープ)を意味する「
」(tokkuk)があります。tok(
)は餅を、kuk(
)はスープを意味します。
カタカナでは、上記と同じ理由で表記が分かれるため、「トック」「トックッ」「トックク」などという表記が見られます。
このように、
(tok)と
(tokkuk)は、
韓国語においては単なる別々の単語で何の問題もありませんが、
日本語にすると紛らわしいカタカナ表記となり、両者が混同される傾向があります。
そしてその紛らわしさに拍車をかけているのが、
(韓国式雑煮)用の餅の商品名です。
この雑煮を作るための餅は、うるち米の粉をこねて圧搾した棒餅を斜め薄切りにした独特のもので、日本の餅とはまったくちがいます。
日本では、在日コリアンの集住地区に古くから小さな韓国食品店が存在し、お正月が近づくとこの棒餅が売られていました。そのような零細食品店で作って売られる棒餅は無包装で保存性が低く、買ってきたら薄く切って水につけておき数日で使い切る、というようなものでした。それが1980年代ごろになると、在日コリアンによる専門の餅製造工場で作られた製品が、薄切りになった状態でビニール包装されて出回るようになり、その後、韓国ブームを迎えると韓国産の輸入品も含めて同様の商品が何種類も流通するようになりました。
そして、これらの商品パッケージがカタカナで「トック」となっていたことが、この言葉が餅をさすのか雑煮をさすのか、紛らわしさの一因を作ったことは否めません。「トック」はもともと料理名でありながら、その料理の主材料にも、同じ呼称をつけてしまったわけです。
ちなみに、原語の韓国語では、この餅をさすのに次のような言葉が使われています。
・
(tokkuk yong tok):直訳すると「雑煮用の餅」
・
(tokkuk tok):直訳すると「雑煮餅」
・
(hin tok):直訳すると「白餅」
・
(karetok):直訳すると「棒餅」
・
(hin karetok):直訳すると「白い棒餅」
ともあれこのパック餅は、そうでなくても多忙な年末に、固い棒餅を手を痛くしながら包丁で大量に切るという主婦の重労働を軽減するとともに、お正月以外でも年中、韓国式雑煮が手軽に食べられるようになったという、画期的な商品であったといえましょう。
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