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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国の伝統的なデザートの中に、
季節の果物を使ったフルーツポンチ状の「ファチェ」(
:花菜)というジャンルがあります。
ファチェの仲間で、夏から秋にかけて作られる代表的な一品に、
梨を甘いシロップで煮た「ペスッ」(
)があります。ぺスッの「ぺ」は梨を意味し、「スッ」は「熟」の音読みで「調理したもの」を意味します。
食べる部分(固形物)と飲み物(液体)のどちらかがメインというより、両方が同じくらいの重みを持つメニューです。
■ 伝統的なペスッの作り方
@
シロップ作り
生姜の薄切りと水を鍋に入れて火にかけ、沸騰したら弱火でしばらく煎じた後、漉して蜂蜜や砂糖を溶かし入れます。砂糖を初めから入れたり、乾燥なつめや桂皮(シナモン)を生姜と一緒に煎じることもあります。
A
梨の下ごしらえ
梨は放射状に6等分ないし8等分し、皮をむいて芯を取り除きます。大きければもう半分に切って、角張っているところを面取りして形を整えます。梨の湾曲した背側に、粒胡椒を2〜3粒ずつ深めに刺し込みます。
B
シロップ煮
@のシロップにAの梨を入れ、皮や切り落としの破片も袋に入れて加えます。火にかけて梨が柔らかくなるまで煮たら、火からおろして冷まします。
C
仕上げ
冷たく冷やして、器に梨とシロップをよそい、松の実やシナモンパウダーをあしらいます。
■ 飲み物としてのペスッ
上記が伝統的なペスッですが、近年では、同様の材料を使ってコトコト煮込んだ煎じ汁を、飲み物として飲む例がしばしば見られます。こちらのペスッは、咳やのどの痛みにきく「のどシロップ」あるいは「健康飲料」「薬膳茶」として、その薬効がフォーカスされています。
作り方は以下のとおりです。
ペッチム(
:梨の蒸し物)、:ペックルチム(
:梨の蜂蜜蒸し)、ヒャンソルゴ(
:香雪膏)などと呼ばれることもあります。
@
梨を器に見立てて中をくり抜く
梨の上から厚さ1pほどのところを蓋として切り取り、下側はスプーンで中身を掻き取ってくり抜いていきます。掻き取った種の部分は捨て、実の部分はとっておきます。
A
梨の器に具を詰める
生姜の薄切りまたは千切りと、
乾燥なつめの千切りを@の梨の器に入れ、蜂蜜をかけます。薬効を高めるためにトラジ(
:ツルニンジン)を加えることもあります。
@でとっておいた実の破片も入れた後、@で切り取った蓋の部分をかぶせます。
B
蒸す
Aをボウル(または陶磁器の鉢など)に入れ、蒸し器にボウルごと入れて、蒸し器の蓋をしてじっくりと蒸します。
C
シロップをとる
Bのボウルにたまった汁を取ります。梨のほうも全体を絞って汁を取り、一緒に合わせます。
D
仕上げ
ホットの場合は、茶器に注いで松の実をあしらいます。アイスの場合は、冷やしてガラスの器などに注ぎ、松の実やシナモンパウダーを浮かべます。シロップは殺菌した瓶に分け入れて上手に保管すると、少しずつ長期間飲むことができます。
■ 朝鮮半島の「間食」「後食」
朝鮮半島の伝統的な食文化では、食事のお膳以外に、「タグァサン」(
:茶菓床)と呼ばれる、お茶と茶菓子をのせたお膳があり、
食事と食事の間のおやつ(間食[カンシッ]
:
)として出されていました。伝統菓子である韓菓(ハングァ:
)は、タグァサンにのせる茶菓子として、あるいは食後に食べるデザート(後食[フシッ]:
)として、発達してきました。
そして李氏朝鮮王朝時代(1392〜1897)には、儒教が尊ばれ仏教文化が衰退する中で、仏教と関連深い「茶」に代わるものとして、ペスッのような甘い飲料・デザート系のメニューが作られ、タグァサンを賑わわせてきた経緯があります。
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