モランボン　薬念研究所韓国の食文化 4月のキーワードチョルピョン

韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、１テーマずつ読み解いていきます。

　韓国の伝統的な餅菓子のひとつに、チョルピョン ()と呼ばれる素朴な搗[つ]き餅があります。韓国の餅には、米またはもち米をまず粉に挽いてから蒸して搗く工程を経るものが多くありますが、チョルピョンもそのひとつで、米粉を適度に湿らせてから蒸して搗き、形作ったのちに模様のついた餅型で押して仕上げます。

　もともと、チョルピョンは車輪模様や幾何学模様のついた平たい丸餅が一般的でしたが、近年は縞模様や葉っぱの形、あるいは貝の形をした餅型で押したり、色とりどりの餅生地を合わせて模様を作ったり、中に餡を入れたりと、さまざまな形態のチョルピョンが見られるようになりました。

■ 端午節のスリチュィチョルピョン

　伝統的なチョルピョンとしては、米粉そのままの白いヒンチョルピョン(

)と、よもぎを混ぜたスッチョルピョン(

)、あるいはスリチュィ(

)と呼ばれる野草(日本名はヤマボクチあるいはヤマゴボウ)の若葉を混ぜた、スリチュィチョルピョン(

)があります。

　特に、旧暦５月５日の端午の節句では、スリチュィチョルピョン、

スリチュィトッ(

)、チャリュンビョン(

：車輪餅)などと呼ばれる、ヤマボクチの若葉を混ぜて搗いた車輪模様の餅を食べる風習がありました。

端午の節句を韓国語ではタノジョル(

：端午節)またはスリンナル(

)と言いますが、その「スリンナル」と音韻的・意味的につながりのあるスリチュィ(

)と「車輪」(韓国語でスレバキ：

)を結びつけ、厄除けやその年の豊作を願ってこの餅が食べられてきたという背景があります。

　こうした伝統的なチョルピョンは、素材のもつ自然な甘みだけで糖類を加えずに作る場合が多く、蜂蜜や水飴をつけて食べることもあります。

■ チョルピョンのバリエーション

　　昨今は、餅生地に工夫を凝らしたり中に甘い餡を入れたりと、現代人の嗜好に合ったバラエティ豊かなチョルピョンが見られるようになりました。米粉をこねるとき、あるいは搗くときに粉末状に加工された副材料を混ぜ込むことで、彩りや香りを生かしたチョルピョンを作ることができます。生地に混ぜる副材料により、次のような種類があります。

・ホバッチョルピョン()
	かぼちゃの粉末を混ぜた、暖黄色のチョルピョン。
・スリチュィチョルピョン()
	ヤマボクチ(ヤマゴボウ)の葉を混ぜた、濃緑色のチョルピョン。
・チョッコグマチョルピョン()
	紫芋の粉末を混ぜた、赤紫色のチョルピョン。
・ペンニョンチョチョルピョン()
	ウチワサボテンの実の粉末を混ぜた、サーモンピンクのチョルピョン。
・トゥルケチョルピョン()
	えごまの粉末を混ぜた、褐色斑点模様のチョルピョン。
・ヒョンミチョルピョン()
	玄米のもち米で作った、黄土色のチョルピョン。
・オッチョルピョン()
	白、緑、紫、黄などで色とりどりに仕上げた、キャンディ状の丸いチョルピョン。オッ()は玉を意味します。
・パッソチョルピョン()
	小豆餡入りチョルピョン。パッソは小豆餡の意味。薄い餅の間に甘い小豆餡を挟んで仕上げます。
・アンコチョルピョン()
	パッソチョルピョンに同じ。アンコは日本語。
・アングムチョルピョン()
	餡入りチョルピョン。アングムは豆類の澱粉、餡を意味します。