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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
朝鮮半島の伝統的な餅菓子のひとつに、「シルトッ(
)」と呼ばれる「蒸し餅」があります。シル(
)は甑[こしき]を、
トッ(
)は餅を意味し、うるち米やもち米の粉を水で湿らせ、豆や木の実、
かぼちゃなどを加えて蒸しあげたもので、昨今の米粉パンもしくは米粉ケーキにも似た、独特な蒸し餅です。
シルトッは、具に何を使うか、
あるいは具と米粉の配し方によっていくつかの種類がありますが、代表的なものでは、
つぶした小豆を層状にまぶした「パッシルトッ」
(
)があります。
■パッシルトッの作り方
@<小豆の下ごしらえ>
小豆は1〜2回茹でこぼしてから柔らかくなるまで茹でる。ザルに上げて水気をきり、ボールに移して熱いうちに塩少々を加えてすりこぎでつぶす。
A<米粉の下ごしらえ>
うるち米粉ともち米粉を半々または好みの配合で混ぜ合わせ(どちらか一方だけでも可)、水少々(米粉の5〜6%ほど)をかけて両手で粉全体をこすり合わせながらまんべんなく湿らせる。湿った米粉を握ると固まり、指で押すとホロリと崩れるくらいの水分量が目安。
B<Aを漉す>
目の粗いザルの下にボールを受け、Aをザルに入れて指でこすりながら漉す。
C<小豆と米粉を蒸籠に入れる
蒸籠(または布巾を敷いた蒸し器)に@の小豆を薄く敷きつめ、その上にBの米粉を平らに広げ、また小豆、米粉…と層状に広げ入れ、最後は小豆で終わりにする。
D<蒸す>
下の鍋にたっぷりの水を入れて沸かし、Cをのせて中までしっかり火が通るまで強火で蒸す。
E<切る>
蒸し上がったら火を止めてしばらく蒸らし、中身を取り出して放射線状あるいは四角く切り分ける。
シルトッはどちらかというと、うるち米粉を主材料とする餅ですが、もち米粉を混ぜることによりもっちりした歯ごたえに仕上がり、冷めても固くなりにくい特長があります。半面、もち米粉が多いと漉しにくくなるため、両方をうまく配合するのがポイントです。
また現在では、上記のように米粉に水を含ませて作ることが多いですが、もともとは米を浸水させてから粉に挽いて作っていました。米粉を使う場合、加える水の量や含ませ方、裏漉しの方法など、経験と感覚による微妙な加減があるようです。
パッシルトッは元来甘い食べ物ではなく、小豆の塩味のみのシンプルな餅でしたが、現在では米粉に砂糖を加えて甘く仕上げることも増えています。その場合、米粉を漉したあとで砂糖を手早く混ぜ込み、すぐに蒸すようにします。
■パッシルトッの象徴するもの
昔から朝鮮半島では、小豆の赤い色を魔物が怖がって寄りつかないと言われており、お節句や秋の豊穣を願う告祀、引越のとき、あるいは結納などでは厄除けを願ってパッシルトッがよく作られてきました。
一方で、宴席や祭祀によっては、
吉祥を象徴する「ペクソルギ」(
:白雪
)という米粉だけの白い蒸し餅が作られてきました。
また、小豆以外にも白豆や緑豆、ごま、かぼちゃ、さつまいも、なつめ、栗、松の実などを入れたシルトッもあります。
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