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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国の代表的な伝統菓子に、ヤックァ(
)があります。ヤックァは漢字で「薬果」と書き、ごま油や蜂蜜を使った「ユミルグァ(
:油蜜果)」と呼ばれる菓子ジャンルのひとつです。
ヤックァは、油を加えた生地をさらに油で揚げて甘いシロップに浸すという、現代の感覚では敬遠されるようなお菓子ですが、油や糖が貴重だった時代にはこの上なく高貴な食べもので、宮中料理としても現代へ引き継がれています。
また韓国の伝統的な食べものには、名前に「薬」(ヤッ:
)
のつくものがしばしばあり、ヤックァもそのひとつです。
「ヤッ」のつく食べものにはたいてい蜂蜜やごま油、シナモン、松の実などが使われており、体によいこれらの食材を「薬」ととらえていた背景があります。
■ヤックァの作り方
@
小麦粉(または小麦粉ともち米粉)にごま油を加え、両手でこすり合わせるようにして混ぜる。このとき、塩や胡椒、シナモンパウダーを加えることもある。全体が混ざってポロポロになったら、ザルで一度漉す。
A
@に蜂蜜、酒、生姜汁などを加えてこね、できた生地をヤックァパン(
:薬果板)またはヤックァトゥル(
:薬果器)と呼ばれる菊模様の木型で押し固めて形作るのが、伝統的な方法。
近年では、生地を台に広げて綿棒で均一の厚さに延ばし、型抜きしたり包丁で四角く切り分ける。このとき、
延ばした生地を折りたたんでまた延ばすことを2〜3回繰り返して、層状の生地にすることもある。
B
Aを低温の油でじっくり揚げる。
C
Bをシロップに漬け込む。シロップは、蜂蜜や水飴、砂糖と水を煮立たせてから冷ましておく。煮立たせるときに、生姜や柚子、シナモンなどを加えて一緒に煎じたり、梅シロップやオリゴ糖を配合することもある。
D
Cの汁気をきって乾かす。松の実を粒のまま、あるいはみじん切りにしてあしらったり、渦巻形に飾り切りした乾燥棗や、かぼちゃの種をあしらうこともある。
ヤックァを作る行程は、さほど複雑には見えないかもしれませんが、実際に上手に作るには、生地の配合や混ぜ合わせ方、揚げ油の温度、シロップの漬けこみ加減など、文字に表われない微妙な調理技術と手間を要します。ちょっとした手順や加減をまちがえると、形が崩れてしまったり歯ざわりが悪くなってしまいます。韓国の伝統餅菓子全般に言えることですが、上手に作る技術の習得には、長い経験と能力を要します。
■ヤックァの種類
チャプサルヤックァ(
) :もち米のヤックァ
小麦粉だけでなく、もち米粉も生地の主材料としているもの。もともとヤックァはもち米粉を入れるものでしたが、近年小麦粉だけのヤックァが増えたため、もち米粉の入ったものは敢えて「チャプサルヤックァ」と呼ばれています。
クンジュンヤックァ(
) :宮中式ヤックァ
もち米粉の入った、大きな菊形をした昔ながらのヤックァ。
モヤックァ(
) :四角いヤックァ
「モ」とは角[かど]を意味します。もともとヤックァは菊の形をした、ある程度ボリュームのあるものでしたが、近年は四角いミニサイズでパイのような層状生地という、おしゃれな仕上げが増えています。
ケソンヤックァ(
) :開城ヤックァ
開城[ケソン]は高麗時代(918〜1392年)からの古都。ケソンヤックァの明確な定義はありませんが、四角く層状に仕上げた「モヤックァ」を、一般にケソンヤックァと呼ぶようです。開城は、日本でいえば京都や鎌倉のように、古都独特の品格や懐古的な美しさがイメージされるようです。
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