キーワードで見る食文化
韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
スペーサー
ヘンボーゴー
 1980年代以降、韓国で急速に普及した外来料理、ハンバーガー。
 ハンバーガーは言うまでもなく、パンにハンバーグと野菜などをはさんだ食べもの。世界的な普及度・認知度とバリエーションの多様性でハンバーガーの右に出る食べものはないのではないでしょうか。
 そもそも、ハンバーグのルーツを遡ると、細かく刻んだ生の馬肉に香辛料を混ぜた、モンゴル系の騎馬民族・タタール人による「タルタルステーキ」であるといわれます。13世紀にモンゴル帝国がヨーロッパにまで勢力を拡張する中で、タルタルステーキはヨーロッパにもたらされました。特にドイツの港町ハンブルクでは、この肉料理が労働者の人気を呼んでさかんに作られ、次第に生で食べるものから焼いて食べるスタイルへと変わっていきました。そして18〜20世紀にかけてドイツから大勢の移民がアメリカへ渡ると、彼らの好んで食べたこの料理が、「ハンブルク風のステーキ」を意味する「Hamburg steak」の英語読み、「ハンバーグステーキ」と呼ばれ、急速にアメリカ社会に根付いていきました。
 そんなハンバーグを、丸パンにサンドイッチのようにはさんで食べるスタイルが生まれたのは1904年、アメリカのセントルイス万国博覧会会場で売り出された「ハンバーガー」であるといわれますが、ほかにも元祖をめぐっては諸説あるようです。
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■ハンバーガーの普及
 その後、アメリカでは1920年代ごろからハンバーガーを衛生的かつスピーディに提供する専門店が出現します。そのひとつが1948年、カリフォルニア州でスコットランド系のマクドナルド兄弟が始めたバーベキューレストランでした。メニューのひとつにハンバーガーをとり入れ、システマティックな生産と店内セルフサービス方式を導入すると、瞬く間に人気を呼び、回転率の高さでハンバーガーが売り上げのほとんどを占めたといわれます。
 1950年代に入ると、その合理的な経営システムに目をつけたユダヤ系実業家がマクドナルド兄弟に提携をもちかけ、買い取った経営権で「マクドナルド」商標をフランチャイズ展開すると、数十年の間に「マクドナルド」は世界的な巨大ファストフードチェーンへと急成長していきました。
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ヘンボーゴー
ヘンボーゴー
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■韓国のハンバーガー
 朝鮮半島に初めてハンバーガーが登場するのは朝鮮戦争中(1950〜1953)、米軍の食糧としてもたらされたものといわれます。その後、食糧難の混乱期を経て韓国にハンバーガー店ができたのは、経済成長の進んだ1979年、ソウルのロッテリア小公[ソゴン]店でした。ロッテリアの経営母体であるロッテは、第二次世界大戦中に朝鮮半島から日本へ渡ってきた韓国人が戦後まもなく日本で創業した菓子メーカーで、ハンバーガー店としては、マクドナルドの日本出店の翌年にあたる1972年に日本橋で1号店をオープンしたのを皮切りに、1979年時点で日本での店舗数は100を越えていました。
 自由な海外渡航が禁じられていた当時の韓国で、アメリカ文化を象徴するハンバーガーは、当時皆無だったセルフサービスの概念とともに人々の憧れと好奇心を集めました。わずかなアルバイト募集に対して5,000人もの応募があったことにも、それはよく表れています。
 翌年、明洞にロッテリア2号店がオープンし1号店同様の大盛況を見せたあと、1984年バーガーキング、1988年マクドナルドなどアメリカのフランチャイズ会社が続けさまに上陸し普及していったことは、韓国の飲食業界はもちろん、人々の生活スタイルにも大きな影響を与えました。
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■韓国オリジナルのハンバーガー
 外資系のファストフード店であっても、実際のメニュー展開は現地国の事情に合わせて設定されることから、韓国ならではのメニューも多数生まれました。
プルコギボーゴー(プルコギボーゴー)
  牛肉や野菜を甘辛いプルコギソースで炒めた具。
ハヌプルコギボーゴー(ハヌプルコギボーゴー)
  韓国牛のプルコギバーガー
キムチボーゴー(キムチボーゴー)。
  ハンバーガーにキムチが入っている
キムチライスボーゴー(キムチライスボーゴー)。
  ライスバーガーにキムチが入ったもの。
モチャレラ イン ド ボーゴー(モチャレラ イン ド ボーゴー)。
  モッツァレラチーズが入っている。
ティレックスボーゴー(プルコギボーゴー)。
  大きな鶏モモ肉の入った、デラックスバーガー。
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ヘンボーゴー
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■本格高級ハンバーガー
 人々の憧れとして韓国にもたらされ、普及と反比例するようにファストフードの代名詞として高級感を失ってきたハンバーガーですが、近年ではカフェやレストランの本格的な高級ハンバーガーとして新たな人気が生まれています。
 中に挟むものは、ハンバーグパテを中心とする伝統的なものから、オニオンリングやツナ、ベーコン、アボカド、オリーブ、キーウイ、黒ニンニク、スパム、マカロニ、グラタン、海老炒め、サラダ、ラーメン、チャプチェ(春雨炒め)、豚キムチなど、実に自由な発想でインパクトのあるハンバーガーが登場し、話題を呼んでいます。
 ソースにはさまざまな工夫を凝らし、色とりどりの具を何層にもわたって高々と積み上げるなど、ビジュアル的にも見ごたえのあるものが多く見られます。中には、具が多すぎてパンに挟みきれないものや、そもそも「挟む」概念を越えてしまっているものもあり、サラダなどとワンプレートに盛り合わされた一品料理として、斬新でダイナミックなメニュー展開に圧倒されます。
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