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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
チャンポン。チャンポンという名前の料理は日本にも韓国にもありますが、それぞれに固有の生い立ちや歴史があります。
日本の「ちゃんぽん」は、19世紀末に福建省出身の中国(当時は清国)人が長崎で開業した中華料理店で、中国人留学生向きに安くて栄養価の高い食事として考案された料理が発祥であると言われます。「ちゃんぽん」の語源は、漢字の「攙[チャン]」(いろいろなものを混ぜるという字義)と、「烹[プン]」(油で炒めて煮るという字義)を合わせた「攙烹[チャンプン]」で、この言葉は料理名であると同時に、「さまざまなものを混ぜる」という意味も持ち合わせていました。この長崎発祥のちゃんぽんは、当初は長崎と船の往来のあった天草や水俣、福岡など九州の一部地域で食べられる程度でしたが、その後「長崎ちゃんぽん」をメインメニューに掲げる外食チェーンの拡散とともに日本全国へ普及していきました。
■韓国の「チャンポン」 料理
一方、韓国の「チャンポン」 (
)
はというと、19世紀末にやはり福建省出身の清国人が港町・仁川に開いた中華料理店
のメニューがルーツとされます。当時の仁川のチャンポンは、鶏骨と豚骨から煮出した白湯[パイタン]
スープをベースとし炒めた野菜や肉の具を入れた地味な汁麺で、
知名度も低かったようです。朝鮮半島へ日本人が続々と渡って行っていた時代、
この料理を見た日本人が、長崎ちゃんぽんと似ていることから「チャンポン」
と呼んだことが料理名の由来であると言われます。
仁川に多く住んでいた中国人は、
港湾労働の一方で飲食店経営にも従事し、日本統治時代には立派な中華料理店が仁川に軒を連ねましたが、
解放後、韓国政府によって外国人の経済活動と土地所有が厳しく制限される中で、
韓国に残った中国人は仁川やソウルで「チュングッチプ」(
:中国家)
と呼ばれる中華料理店を細々と営み続けました。
安くて美味しくボリュームのあるチュングッチプの料理は、混乱と貧困の続く復興期の韓国において、
庶民の人気を確実に得ていきました。中でもチャンポンは、チャジャンミョン(
)と並ぶ二大人気メニューでした。
1960〜1970年代にかけてチュングッチプが最盛期を迎える中で、チャンポンのベースは野菜中心の白湯スープから海老や貝類、イカなどの海産物を入れ唐辛子をきかせて真っ赤に仕上げた、現在の姿へと大きく変化を遂げました。スープの材料も豚骨より鶏骨が主流となり、脂っこさのない爽やかな辛味と旨味の際立つ海鮮チャンポンとして、イメージが定着していきました。
長崎ちゃんぽんも韓国チャンポンも、もとは福建省出身者が作った同じような麺料理でしたが、時代を経るうちにすっかり別の料理へと変わっていったのでした。
■韓国チャンポンのいろいろ
・
(ヘムル チャンポン)海鮮チャンポン
チャンポンといえば一般に海産物が入っているものですが、その中でも特に「海鮮」を銘打ったもの。よく使われるのが海老、いか、ムール貝、あさりなどで、ほかに牡蠣、いいだこ、手長だこ、あわび、蟹などが入った豪華版もあります。
・
(サムソン チャンポン):五目チャンポ
ン
サムソンは漢字で「三鮮」と書き、「海鮮三種」すなわち海老、いか、なまこ、あわびなどの中から三種取り合わせることを意味します。しかし、実際には必ずしも三種類というわけではなく、他に筍、椎茸、きくらげ、玉葱、にんじん、豚肉などの入った、いわゆる「五目」を意味します。
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(クル チャンポン):牡蠣のチャンポ
ン
牡蠣を中心に玉葱やにんじん、白菜、きのこなどが入っています。唐辛子を入れずに白スープ仕立てにすることもよくあります。
・
(コギ チャンポン):肉チャンポ
ン
牛肉または豚肉の細切りを中心に、他の野菜類も入っています。
・
(チャドル チャンポン):牛バラ肉のチャンポ
ン
チャドルは「チャドルバギ」(
)のことで、牛バラ肉の中でも硬めの脂肪質の部位。独特のコクとしっかりとした噛み応えがあり、韓国では人気のある部位です。
・
(ペッ チャンポン):白チャンポ
ン
チャンポンといえば唐辛子のたっぷり入った真っ赤なスープが定番ですが、その中にあって敢えて辛くせず白いスープに仕立てたものをいいます。
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