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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
中国を起源とする陰陽五行思想では、奇数が陽、偶数が陰とされます。陰陽五行思想を文化的背景に持つ東アジアの中国、韓国、日本などでは、月日に奇数の同数が重なる1月1日、5月5日、7月7日、9月9日などを、暦の上では陽の極まる節目の日(節句)に定めています。中でも、最大の陽数である9が重なる9月9日は、「重陽節」と呼ばれ、各国とも公休日にこそなっていませんが、邪気を祓い不老長寿や無病息災、子孫繁栄、五穀豊穣を祈願する伝統的な年中行事がとり行われます。
ところで、もともとこのような歳時風俗は陰暦(旧暦)を基準とするもので、陽暦(新暦)に基づく現代の月日の流れでは1〜2ヶ月近くのずれが生じてしまいます。現在、日本ではほぼすべての面において陽暦が採用されているため、こうした節句が本来の意味を成しえなくなっていますが、韓国や中国では、陽暦を基準としながらも年中行事は陰暦を併用するという方法がとられています。ちなみに、2018年の陰暦による重陽節は、10月17日となっています。
■韓国の重陽節
韓国では、重陽節をチュンヤンジョル(
)
と呼びます。チュングジョル(
:重九節)、あるいはチュング(
:重九)と呼ぶこともあります。
朝鮮半島では古く、重陽節になると文人墨客が山に登って紅葉や菊を眺め、詩を吟じたり酒をたしなむ風習があったといいます。一方、農民にとってはこの季節こそ米や芋の収穫期で、これにより一年の農作業が一段落する節目でもありました。韓国では近年でも、食べ物や飲み物を持って野外へピクニックに出かけるという身近な文化がありますが、秋のピクニックは重陽節の名残だと言われています。
また、重陽節は菊と深い関係があります。この季節に満開を迎える菊の花は不老長寿、高貴、美を象徴することから、重陽節の宴では菊が愛でられ、菊にまつわる飲食物や遊びが楽しまれてきました。
ユジャファチェ(柚子と梨の花菜)
■重陽節のチョルシッ(節食
韓国では、それぞれの節句や年中行事ごとに決まって食べる伝統的な食べ物・飲み物のことを「チョルシッ」(
:節食)といいます。重陽節の代表的なチョルシッは、次のとおりです。
・クックヮジョン(
:菊花煎)
菊の花びらをのせて焼いた柔らかい餅菓子。餅米粉をこねて薄い丸形に延ばし、油をひいたフライパンで両面を焼きます。仕上げに餅の上面に菊の花びらを美しく飾りつけて焼き上げ、蜂蜜をぬります。
・クックヮジュ(
:菊花酒)
菊の花びらを浮かべたお酒。お酒は清酒が一般的ですが、
マッコルリ(
:どぶろく)に花びらを浮かべることもあります。
・ファチェ(
:花菜)
梨や柚の細切り、柘榴、松の実などをシロップに浮かべた、フルーツポンチ状の飲み物。シロップは蜂蜜や砂糖、果物の汁などを混ぜ合わせて作ります。
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