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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
結婚式の月といえば、6月。"June bride"(6月の花嫁は生涯幸せに暮らせる)という欧米の言い伝えはあまりにも有名です。とはいえ、韓国では日本同様、6月が雨の多く蒸し暑い季節にあたるため、実際人気のある結婚式シーズンは秋(10〜11月)、次いで春(4〜5月)となっています。
現代の韓国では、結婚式は専門の式場やホテル、教会にて洋式で挙げることが最も多いようです。式の流れは、新郎新婦の入場から誓いの言葉、成婚宣言、ケーキカット、友人による余興、両親への挨拶などですが、日本の「披露宴」のようなものはなく、短時間でスピーディに進行していきます。
そのような韓国の結婚式の一般的特徴として、以下の点を挙げることができます。
・
「チュレ」(
:主礼)と呼ばれる男性の主宰者が、聖職者・司会者・媒酌人を兼ねた役割をする。チュレは新郎側の恩師や名士に頼むことが多い。
・
たくさんの人に祝福してもらうことこそ大切だという認識があり、友人や家族づれで出席したり、招待状をもらっていなくても気軽に出席できる。席は自由席で立ち見も多い。
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服装がカジュアル。親族の女性は伝統衣裳の韓服を着ることが多いが、参加者は比較的カジュアルな私服
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ご祝儀が安価。受付に準備された白封筒に現金を入れて提出できる。ピン札でなくてもまったく意に介されない。
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格式張らない雰囲気。忙しくても、服やお金の準備が万端でなくても、仕事の合間に都合をつけて式に出席することができる。おおらかで「情」のある韓国人の国民性を象徴する現象といえよう。
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食事がビュッフェスタイル。受付で渡された食券で、式後に大広間でビュッフェを食べることができる。友人知人と自由席でそれぞれに豪華なビュッフェを楽し
・
写真撮影が活発。式当日もカメラマンの活躍ぶりは目覚ましいが、それ以上に手間とお金をかけるのが事前撮影。フォトスタジオや野外スポットを使ってさまざまな衣裳・ヘアスタイル・背景・ポーズで撮影し、女優・俳優顔負けのパネルとアルバムを作る。
■伝統的な婚礼儀式「ペベッ」(幣帛:
)
韓国の結婚式では、ウェディングドレスで挙式したとしても、式後に新郎新婦とも伝統衣裳に着替え、「ペベッ」という儒教式の婚礼儀式を行うことがほとんどです。
「ペベッ」とはもともと、新婦の家で婚礼を済ませた新郎新婦が、婚家へ行って新郎家族に礼を挙げるにあたり、新婦の家から用意していく布や衣装、食物などの貢ぎ物をさす言葉でしたが、近年では新婦が新郎の両親・親戚に初めて挨拶する儀式を意味するようになり、さらには、挨拶の対象に新婦の両親・親戚も加わるようになりました。
式場やホテルで行われる現代の結婚式では、式後に来客が大広間でビュッフェの食事をしている間、「ペベッシル」(幣帛室)と呼ばれる別室に親戚が集まり、行われることが多いようです。
ペベッの儀式では、新婦は「ノギホンサン」(
:緑衣紅裳)と呼ばれる、緑色のチョゴリ(上衣)に赤のチマ(スカート)を着用した上に、「ファロッ」(
:闊衣)または「ウォンサム」(
:円衫)という豪華な上着を着、「チョットゥリ」(
)という帽子をかぶるのが一般的です。一方、新郎は「サモクァンデ」(
:紗帽冠帯)と呼ばれる青長衣に黒帽子が定番です。
■ペベッの手順
ペベッの手順はもともと複雑かつ厳格なものでしたが、現代では簡略化し、次のような流れになっています。
@
新郎の両親が、婚礼料理の並ぶお膳「ペベッサン」(
:幣帛床)の正面に座り、その手前に新郎新婦が立つ。新郎新婦そろってクンジョル(
)という最も深いお辞儀を4回(略式では2回)する。クンジョルは、
男性は両膝をついてから両手をつき額づく。
女性は両手を前に重ね合わせて肘を広げたまま、胡坐の形に腰を下ろし首を垂れる。
A
新婦が杯を持ち、新郎が注いだお酒を両親へ手渡す。
B
杯を手渡された両親は飲み乾し、お膳の食べものを食べ、お祝いの言葉を贈る。
C
新郎新婦が大きな白布を広げて持ち、両親が投げる栗と棗(多産の象徴)を布で受け止める。
D
両親が、チョルカプ(
:挨拶代)と呼ばれる、封筒に入ったお祝金をお膳に置く。
E
続いて新郎の祖父母、新郎の父の兄弟夫婦が順に座り、C
以外の所作をとり交わす。最後に新郎の兄弟に対しては、
対等の意味からクンジョルではなくピョンジョル(
)と呼ばれる浅いお辞儀を交わす。
F
新郎新婦がお膳の前へ進み、親戚一同の前で互いに注ぎ合ったお酒を飲み干す。
G
新郎が新婦の口に棗を加えさせ、棗を新郎新婦で分け合って食べる。
H
新郎が新婦を背負って部屋を一周する。
ペベッにおいて、花嫁の脇でさまざまな補佐をしてくれる「スモ」(手母)と呼ばれる年配女性の役割は重要です。スモは花嫁衣裳の着付けやお化粧に始まり、クンジョルのとき立ち上がるのを支えたり、花嫁に代わって杯を運んだり、新郎新婦や親族たちに手順や動きを指示したりと、いわばペベッ全体の進行を司る役割を担います。
■ペベッサン(幣帛床:
)
ペベッで重要な婚礼膳(ペベッサン)は、地方や家により内容はさまざまですが、欠かさず用意されるものとして、棗や栗をぎっしりと積み上げたもの、肉脯(ユッポ:干し肉)、九節板(クジョルパン:8種類の具と薄皮を八角の漆器に盛り合わせた料理) 、色とりどりに飾った丸鶏(ペベッタッ)などがあります。
また、
結婚式で来客に必ずふるまわれるのが、冷麺やそばなどの麺類(クッス
:
)。韓国において麺は、その長さから末永い幸せと長寿を象徴する食べもので、
「麺をいつ食べさせてくれるのか?」(
)
という質問は、「いつ結婚するのか?」を意味します。
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