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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国料理には、酒の肴におあつらえ向きの濃厚な味の料理が非常に多く、飲酒型食文化の広がりを感じさせられます。
中でも、年間を通して一般庶民の変わらぬ人気を誇る酒肴が「コルベンイ ムッチム」(
)。コルベンイ(
)
は俗称で、正式名は「クンクスル ウロンイ」(
)という巻貝の一種です。
日本ではタマガイ科の「ツメタガイ」がこれにあたりますが、日本でも「ツブ貝」という曖昧な俗称で呼ばれる方が多いようです。
さて、そんなツブ貝をスライスし、生野菜とともに甘酸っぱ辛いたれで和えたのが「コルベンイムッチム」、すなわち「ツブ貝の唐辛子酢みそ和え」です。
主材料となるツブ貝は、韓国ではむき身を水煮にした缶詰の状態で多く出回っており、スーパーでもコンビニでも手軽に買い求めることができます。これを缶から出してスライスし、チョコチュジャン(唐辛子酢みそだれ)で和えます。
この料理においてチョコチュジャンは極めて重要な要素で、
店により家によりさまざまな配合が工夫されます。
一般的にはコチュジャンをベースに酢、砂糖、粉唐辛子、おろしにんにく、しょうゆ、すりごま、胡椒、
ごま油などを混ぜ合わせ、とろりと照りのある鮮紅色のたれに仕上げられます。ほかに、
水飴やサイダー、オリゴ糖、梅シロップ、味噌、マヨネーズなどを加えるこだわりレシピもあります。
いずれにせよ、韓国語で
(セッコム タルコム メッコム:
酸っぱ甘辛い)と表現される三味のバランスが決め手となります。
そして、一緒に和える生野菜も、
シャキシャキした歯ざわりとみずみずしさ、それぞれが持つ独特の風味を料理に与えてくれる大事な副材料です。
よく使われるのがきゅうり、玉ねぎ、長ねぎ、えごまの葉、にんじんなどで、
場合によってはサンチュ、芹、青唐辛子、ピーマン、パプリカ、大豆もやし、
紫キャベツなどの野菜や、りんご、梨などの果物が入ることもあります。果物が入ると、上述の三味に
(サンクム:爽やかさ)が加わります。これらの野菜・果物はどれも細切りにし、
全体をチョコチュジャンで混ぜて食べたとき、口の中でさまざまな複合の味を楽しめるところが身上です。
■コルベンイムッチムのバリエーション■
近年、飲食店のコルベンイムッチムには、
素麺や冷麺の麺、チョルミョン(
)と呼ばれる極めてコシの強い太麺などを使い、
茹でてクルクル巻いたものを脇に添えるなど、バリエーションが広がりつつあります。
コストの高いツブ貝に比べて安価で相性のよい麺を添えることにより、
料理を嵩増[かさま]しすると同時に、麺を一緒に混ぜて食べることで別の美味しさを演出できるという魅力もあり、流行しつつあります。
さらに、ツブ貝のほかに干し鱈の細切りや、さきいかを一緒に和えたものなども見られます。
■組み合わせ料理いろいろ■
ところで、この「刺身+生野菜+チョコチュジャン」という黄金の組み合わせは、刺身となる魚介類あるいは肉類を何にするかによって実に幅広いメニューが展開できます。
刺身は韓国語でフェ(
:膾)といいますが、韓国語のフェは必ずしも生でなくてもさっと茹でたり焼いたりして冷やしたもの(スッケ:
:熟膾)も含まれます。つまり、魚介類や肉類の生あるいはさっと火を通したものをスライスし、
細切りの生野菜や果物とともにチョコチュジャンで和えて仕上げると、
同様の味つけでさまざまな料理のバリエーションができます。たとえば、しばしば目にするものでは次のようなメニューがあります。
・貝を使ったもの
…チョゲフェムッチム(
:貝の唐辛子酢みそ和え)。貝は、前述のツブ貝以外にもあさり(
:パジラッチョゲ)、はまぐり(
:ペッカプ)、たいらぎ(
:キチョゲ)、ホタテ貝(
:パプチョゲ)、ほや(
:モンゲ)、サザエ(
:ソラ)、牡蠣(
:クル)など。
・魚を使ったもの
…サッパ(
:ペンデンイ)、エイ(
:ホンオ)、まながつお(
:ピョンオ)など。
・その他…
いか(
:オジンオ)、たこ(
:ムノ)、てながだこ(
:ナッチ)など。
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