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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
朝鮮半島には、鳥獣肉の内臓肉(モツ)を使った料理がたくさんあります。
中でも、さまざまな内臓肉で手軽に作られ、
パンチのきいた味つけと内臓特有の食感・風味で酒の肴やご飯のおかずとして人気のある大衆料理に、ネジャンポックム(
:モツ炒め)があります。
■内臓肉(モツ)のいろいろ■
内臓肉については、肉食の歴史が浅い日本ではまだまだなじみが薄いかもしれませんが、世界的に見るとヨーロッパではフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガルなど、アジアではインド、パキスタン、中国、朝鮮半島などのほか、アメリカ、南米、アフリカの一部などじつに世界各地に伝統的な内臓料理が存在します。
ちなみに、日本語の「モツ」という言葉は「臓物[ぞうもつ]」に由来し、いわゆる「正肉[しょうにく]」に対する内臓肉をさします。主な内臓肉としては、次のようなものがあります(カッコ内は日本語と韓国語の通称)。内臓肉の日本語名の中には音や意味の上で朝鮮語由来のものが多くあり、内臓肉が日本国内で食べものとして取り入れられ普及していく上で朝鮮半島出身者の存在が大きかったことを物語っています。
<牛>
心臓(ハツ:
[ヨムトン])、肝臓(レバー:
[カン])、第一胃(ミノ:
[ヤン]または
[ヤンギンモリ])、第二胃(ハチノス:
[ポルチプ]または
[ヤン])、第三胃(センマイ:
[チョニョプ])、第四胃(ギアラまたはアカセンマイ:
[マッチャン])、小腸(ヒモ:
[コプチャン])、大腸(シマチョウ:
[テチャン])、舌(タン:
[ウソル]または
[ヒョ])、腎臓(マメ:
[コンパッ])、脾臓(チレ:
[チラ])、肺(フワ:
[ホパ])
<豚>
牛とほぼ種類は同じですが、胃は一つだけで日本語では「ガツ」と呼ばれます。子宮(コブクロ:
[セッキボ]または
[エギチプ] )もよく食べられます。
<鶏>
心臓、肝臓のほか、鶏特有の内臓に砂肝[すなぎも](
[モレチプ]または
[トンジプ])があります。
なお、正肉・内臓肉のどちらにも分類しづらいが敢えて分けるなら内臓の部類に入るものとして、テール(尾)、アキレス腱、皮、スジ、食道、気管、血管、耳、足、血などがあります。また、一般に正肉のように思われがちな「ハラミ」「サガリ」と呼ばれる赤肉の部位は、牛の横隔膜の部分にあたり、正確には内臓肉に分類されます。
長い肉食の歴史をもつ朝鮮半島では、こうした半端な部位や境目のところなども含め、すべての可食部分が余すところなく適切な調理法で調理され、食べ尽くされます
屠殺後、死後硬直を経て一定の熟成期間の後に食される正肉とちがって、内臓肉は腐敗が速く「鮮度が命」と言われるため、流通がカギとなります。日本では古くからの慣例上、解体後すぐに水洗いされ、生産地域内の特別なルートで販売されることが多いようです。
■ネジャンポックム(
)の作り方■
ネジャンポックムは、
上記のような内臓肉を単品または何種類か取り合わせ、ほかに野菜なども加えて、
薬味のきいた甘辛いタレで炒めて仕上げます。
入れる材料の種類により、コプチャンポックム(
:小腸炒め)、テッチャンポックム(
:大腸炒め)、マッチャンポックム(
:アカセンマイ炒め)、カンポックム(
:レバー炒め)、ヤンポックム(
:ミノ・ハチノス炒め)、トンジプポックム(
:砂肝炒め)、などという料理名にもなります。
一般的な作り方をご紹介します。
@
内臓肉の下処理
内臓肉は、下処理されたものを購入した場合は、状態をみて水洗いやゆでこぼしをしておきます。下処理されていない場合は、粗塩や小麦粉でもみ洗いしてぬめりを完全にとり、ものによっては流水に晒して血抜きしたり、皮をはいだり余分な脂をとった後、酒や生姜、葱の青い部分などを加えて下ゆでします。下ゆでの時間は部位や鮮度、好みによりちがってきますが、1〜2時間くらいのものが多いようです。
ゆで上がったら水洗いし、薄切りまたは適当な大きさに切り、ものによっては味がしみやすいように包丁目を入れます。臭みが残っていれば、さらに水に晒したり、酢水でゆでこぼすなどします。
A
ヤンニョムの混ぜ合わせ
クセの強い内臓だけに、香辛料をきかせたたれ(
:ヤンニョムジャン)がポイントになります。
たれの配合はさまざまですが、一般的なものではコチュジャン(
:とうがらし味噌)や味噌、
しょうゆをベースに、粉とうがらし、酒、おろしにんにく、おろし生姜、砂糖、胡椒、ごま、水飴などを混ぜ合わせて作ります。
B
野菜の下準備
玉ねぎ、キャベツ、にんじん、ピーマン、長ねぎ、青とうがらし、えごまの葉、芹などを入れるのが一般的です。それぞれ皮や種をとって薄切りやざく切りにしておきます。
C
炒め合わせて仕上げ
油をひいたフライパンに野菜を硬いものから順に入れて炒めた後、下処理された内臓肉とヤンニョムジャンも加えて炒めます。途中でだし汁または水を少々加えてこげつかないように材料によく火を通し、長ねぎやえごまの葉、芹などは最後に入れて、汁気を飛ばして照りよく全体を炒め合わせます。
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