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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
肉食文化の伝統がある朝鮮半島の食文化には、鳥獣肉類の中でいわゆる「肉」と呼ばれる部分(正肉[しょうにく])以外に、内臓や軟骨、手足、顔、舌、尻尾、血などさまざまな部位を調理して食べ尽くす知恵が随所に見られます。
そんな正肉以外の部位を使った人気料理のひとつに「チョッパル」(
:豚足)があります。豚の足をゆでたり煮込んだりした料理です。
チョッパルのチョッ(
) は「足」という漢字の韓国語読み、
パル(
) は「足」を意味する韓国固有語のため、意味の重複する日常語が定着したことばとみられます。
■代表的なチョッパル■
現在、韓国で「チョッパル」といえば、豚足でも足首よりかなり上のあたり(日本で「スネ肉」と呼ばれる部位)までを含む、肉のたっぷりついた部位を使って、味つけした煮汁で長時間煮込み、冷まして薄切りにした料理をさすのが一般的です。
シンプルなチョッパルの場合、味つけのベースは塩、酒、醤油などで、ほかに生姜、ねぎ、にんにく、胡椒などを加えて肉臭さを消す工夫をします。また、回香(フェンネル)、八角(スターアニス)、肉桂(シナモン)、丁香(クローブ)、山椒、陳皮など中国料理の代表的な香辛料(いわゆる五香粉)をきかせたチョッパルも古くからあります。
もともと、
このような肉のたっぷりついたチョッパルは「ワンジョッパル」(
)
と呼んで、普通のチョッパルと区別していました。
ワンとは漢字で「王」と書き、「最上の」「最高の」という意味があります。
では、普通のチョッパルがどのようなものかというと、
豚の足首より先の、肉がほとんどついていない部位のことです。
日本で一般に「豚足」というとこちらのことで、茹でた状態で提供され、骨のまわりについたスジや皮、
軟骨などをむしってチョコチュジャン(
:唐辛子酢味噌)につけて食べるイメージがあります。
その後、韓国社会の変遷とともに次第に肉づきのよいワンジョッパルが主流となり、「チョッパル」といえばワンジョッパルをさすようになりました。
興味深いのは、前足と後ろ足で味がちがうといわれる点です。前足のほうが柔らかくて美味しいとされ、別々に販売される店ではたいてい前足のほうが高い値段設定になっています。
■チョッパルの歴史■
チョッパルは、一説によると中国料理の「紅醤猪脚」がルーツだといわれます。実際1980年代くらいまでは、チョッパルといえば上述の「五香粉」が強く香る食べものだったといいます。
チョッパルが現在のように韓国で一般的な食べものになったのは比較的最近のことで、もともとは朝鮮半島の北部地方でよく作って食べられていた料理でした。それが、朝鮮戦争(1950〜1953年)を前後して南部へ避難してきた北部出身者によって、この料理が徐々に韓国内で普及していきました。現在、有名なチョッパル横丁のあるソウル・奨忠洞[チャンチュンドン]は朝鮮戦争当時、北部からの避難民が大挙して流れ込み住み着いた場所でもあります。
■現在のチョッパル風景
チョッパルはもともと専門店で仕込んで販売されていましたが、近年、新たなチェーン形式のチョッパル専門店が続々と登場しています。その背景には、コラーゲンやビタミン豊富で美肌効果の高いチョッパルに対する老若男女を問わぬ人気があるようです。
チョッパルは、
煮上がって冷めてから骨をはずして薄切りにし、大皿にきれいに盛りつけて提供されます。チョッパルと似た韓国料理に、
豚肉をかたまりごと茹でて薄切りにした「ポッサム」(
)があり、
専門店ではたいていこの二つのメニューが並んでいます。両方ともサンチュやえごまの葉、
ゆでた白菜などが添えられ、それに肉をのせ、サムジャン(
:薬味みそ)やキムチ、
刻み葱の和え物などとともに包んで食べるのが、通常のスタイルとなっています。
また、チョッパルと一緒に食べるのが通例となっている料理に、
チェンバンククス(
)、マッククス(
)
などと呼ばれる唐辛子酢みそ味の混ぜ麺や、ピンデトッ(
:砕いた緑豆の生地を油で焼いたお焼き)があります。ともに、失郷民(
:シリャンミン)
と呼ばれる朝鮮半島北部出身者の郷土料理であることに、郷愁の想いが伝わってきます。
近年、韓国での激辛ブームの影響か「プルチョッパル」(
:プルは火の意味)、「メウンチョッパル」(
:メウンは辛い意味)などと呼ばれる激辛チョッパルや、「ファドックイチョッパル」(
)
と呼ばれる石窯焼きのチョッパルもお目見えしました。さらに、
登場するや人気を博しているのが「ネンチェチョッパル」(
)です。ネンチェは漢字で「冷菜」と書き、
色とりどりの野菜をきれいに並べた中央にチョッパルを盛り込み、
芥子酢醤油や薬味酢醤油をかけていただく、見た目にも豪華な大皿料理です。
このように、チョッパルは次々とヴァリエーションを増やし、イメージを刷新しつつ注目度を上げています。
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