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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
ゆで豚とキムチを白菜やサンチュなどの葉で包んで食べる
「ポッサム」(
) は、韓国の数ある肉料理の中でも、酒の肴として、
あるいはご飯のおかずとして老若男女を問わず人気のある料理で、
調理法のジャンルでは「サム」 (
:包み料理 のひとつに分類されます。
「ポッサム」の「ポ」は漢字で「褓」と書き、「ポジャギ」
(
) すなわち風呂敷を意味します。一方「サム」(
) は包むことを意味するため、
風呂敷のように包んで食べるというイメージからついた料理名です。
ポッサムは、豚肉・キムチ・包み野菜という3つの材料の絶妙なコンビネーションが身上ですが、メインは何といっても豚肉です。豚肉はバラ(三枚肉)やロース、肩ロースなど適度に脂身を含んだ部位を選び、かたまりごとゆでます。ゆでる方法にはいろいろあり、豚肉の臭みを消し、パサパサせずしっとりと柔らかくゆで上げるために工夫が凝らされます。たとえば、ゆで汁に生姜やにんにく、葱、玉ねぎなどの香味野菜を入れたり、酒や味噌を入れたり、肉を先に強火で焼きつけてから煮立った汁に入れたり、薬味調味料に肉を漬けこんでから水を注いで煮込んだり、といった具合です。そしてかたまり肉の中心までほどよくゆで上がったら厚さ数ミリ〜1センチ弱にスライスしますが、切るタイミングもさまざまです。ゆで汁に浸かったまま自然に冷めてから切る、ゆでたての肉をすぐに切る、ゆで上がった肉の表面を冷水でさっと洗ってから切る、などなど。
次にキムチですが、これにはもともとこの料理が、「キムジャン(
)」
という晩秋に一冬分のキムチを漬け込む一家総出の大がかりな作業の後に食べられていた、
という経緯がからんできます。キムジャンの作業日には前もって豚肉をゆでておき、
大量のキムチを漬け終わった後で、残った具や塩漬け白菜をゆで豚と一緒に美味しく食べる、
という流れが一般的にあったようです。そのため、ポッサムに添えられるキムチは、
漬けたての白菜キムチや、
キムチの具、すなわち細切り大根に各種ヤンニョムをまぶしたものや、切り干し大根のヤンニョム和えなどであることが多々あります。
最後に包み野菜ですが、これも上述の経緯から、白菜の葉を塩漬けしたものがよく使われます。また、白菜の葉を茹でるか蒸したものや、サンチュ、えごまの葉なども使われますし、生の白菜が出てくることもあります。
さらに、この3要素以外にサムジャン(
:包み料理用に各種ヤンニョムを混ぜ合わせた薬味味噌)、アミの塩辛、細切り葱の薬味和え、
スティック野菜、生にんにく、生とうがらし、生牡蠣などが添えられていることもあり、
それらも一緒に包んでいろいろな味を楽しみます。
ポッサムの大皿盛りは、見た目にもダイナミックで食欲を掻きたてられます。ゆで豚は切り口少しずつずらして並べ、キムチはこんもりと、包み野菜は種類ごとにまとめて盛りつけます。塩辛や薬味は小皿に入れてから大皿にのせたり、横に添えることもあります。
ポッサムは、豚肉のかたまりさえ用意すれば家庭でも比較的手軽に失敗なく作れる料理ですが、韓国では焼酎やマッコルリの酒肴として登場する外食メニューのイメージも強くあります。
従来、
ポッサムはチョッパル(豚足の煮込み)を看板に掲げる専門店でたいがいメニューに置かれているものでしたが、
近年ではポッサム専門のチェーン店も増え、ソウルの鍾路3街(
:チョンノサムガ)にはポッサム横丁もあります。
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