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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国庶民に長年愛されてきたお酒がマッコルリ(
:韓国式どぶろく)と焼酎なら、
それに似合う酒肴の筆頭は「ピンデトッ」(
) といえましょう。
今月は、ピンデトッについてです。
ピンデトッは「お焼き」の一種で、緑豆を挽いた生地に葱やもやし、わらび、キムチ、豚肉などを入れてたっぷりの油で揚げるように焼いた、ボリュームのある料理です。
韓国料理の調理法では、
ピンデトッは「チョン」(
)、「プッチム」(
)、「チヂミ」(
) などと称される
「お焼き」のジャンルに入りますが、緑豆を使ったこの料理だけは、「ノットゥジョン」(
:緑豆のチョン)、
「ノットゥチヂミ」(
:緑豆のチヂミ)などの呼称を抑えて、圧倒的に「ピンデトッ」と呼ばれてきました。
語源には諸説あり、
「トッ」が餅を意味する韓国固有語であることは確かな一方、「ピンデ」については「貧者」「餅煮」「餅子」「餅
」などの漢語がルーツだという説や、
「南京虫」を意味する韓国固有語だという説もあり、
その根拠とされる文献により記述はさまざまなようです。
そして、
一時「ピンデトッ」と言いながら小麦粉の混ぜ物で増量したものが出回ったため、きちんと緑豆で作ったものは、
差別化して「ノットゥピンデトッ」(
:緑豆のピンデトッ)と呼ばれるようになりました。
■ピンデトッの作り方■
韓国では近年、日本の「天ぷら粉」よろしく「ピンデトッ粉」なる商品が多数販売されているため、家庭でも飲食店でもこの粉を使って手軽にピンデトッが作れるようになりました。
一方で、やはり本物のピンデトッの味を追求し、従来どおり手間をかけて緑豆からピンデトッを作っている専門店や家庭もあるようです。
ここでは、従来の作り方をご紹介しましょう。
@緑豆の下準備
緑豆(挽き割りのものだとやりやすい)を一晩水につけます。水で膨張した緑豆を両手でこすり合わせるようにして皮をはぎ、水面に浮かんだ皮を取り除きます。これを何度も繰り返し、完全に皮を取り除きます。
韓国ではコピノットゥ(
:去皮緑豆)と呼ばれる、
皮をむいた緑豆が出回っており、それを使う場合は水につけるだけで皮を取り除く手間が省けます。
A生地の準備
@の緑豆に水と塩少々を加えてミキサーにかけ、
とろとろの生地を作ります。ここに米粉またはもち米粉を混ぜる方法や、
水につけた米またはもち米を一緒にミキサーにかける方法もあり、どの材料をどのくらいの配合で混ぜるかで、
焼き上がりの味や食感が変わってきます。また、ミキサーではなくメットル(
)
という石の挽き臼をぐるぐる回して緑豆を挽くのが伝統的な方法で、現在でもこの方法で生地を作っているところがあります。
B具の準備
葱やキムチは粗みじんに切り、もやしはさっと茹でて刻み、水気を絞ります。わらびもさっと茹でて刻みます。豚肉(ひき肉または刻む)を入れる場合は醤油、おろしにんにく、ごま油、胡椒などで下味をつけます。
C焼く
AとBを混ぜ合わせ、ごま油をたっぷりひいた鉄板またはフライパンに丸く広げて両面を焼きます。大きさは家により店によりさまざまですが、薄すぎず厚すぎず、比較的高温で中まで火を通しつつカリッと香ばしく焼きあげるのがポイントです。表面に生の青とうがらし・赤とうがらしのスライスを形よくのせてから裏返して焼きあげることもあります。
また、あまり一般的ではありませんが、生地と具を混ぜ合わせずに焼く方法もあります。その場合は、Bをあらかじめ混ぜ合わせておき、油をひいた鉄板にAを丸く広げてからBを薄く広げるようにのせ、その上にまたAをのせてサンドし、裏返して両面を焼きあげます。
D盛りつけ
小さければそのまま、大きければカットして器に盛りつけます。チョカンジャン(醤油、酢、砂糖などを混ぜ合わせたタレ)やヤンニョムジャン(そのほかにみじん葱やおろしにんにく、すりごま、とうがらしなどの薬味を加えたタレ)を添え、アツアツをつけていただきます。
マッコルリとともに、韓国庶民の飾らない酒場風景を彩ってきたピンデトッ。
現代でも在来市場のひとつ、ソウルの広蔵市場[クァンジャンシジャン]では夕方になると、長年ピンデトッ一筋に営業してきた名物店一帯が、ピンデトッとマッコルリでくつろぐ市民や観光客でにぎわうようです。
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