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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国の飲食店でチゲなどを頼むと、
たいてい黒っぽい土鍋に入ってグツグツと煮立った状態で出てきます。
出てきた料理は、小鉢などによそったりせず、土鍋にスッカラッ(スプーン)を入れて熱々をじかに食べるのが一般的です。
この、食器も兼ねた大衆的な土鍋を韓国語で「トゥッペギ」(
)
といいます。今回はこのトゥッペギについて見ていきましょう。
トゥッペギは、さまざまな韓国の焼きものの中でも、
もともと鉄含有率の高い黄土・赤土系の素地を焼くときに、
土中の鉄分と灰が反応してできる天然釉薬を利用し、濃褐色〜黒色に発色させて仕上げた「オジグルッ」(
)
という陶器のひとつです。現代では、鉄分を含む高火度釉薬[こうかどゆうやく]
(高温で溶けて焼きつく釉薬)のひとつ、「鉄釉[てつゆう]」を塗って作られますが、
トゥッペギがおしなべて黒っぽい色をしている理由はここにあります。
トゥッペギは直径10cmほどの小さなものから直径20cmほどの大きなものまで、ほぼ1cm刻みで各種サイズがあり、料理や人数に応じて多様に使い分けられています。形も、地方やメーカーによってヴァリエーションがあり、一般的な羽釜[はがま]形のもの以外に、両手の突起がついたもの、口よりも腹のあたりが膨らんでいるもの、底までストンとして凹凸のないものなどがあります。羽釜形の並品は蓋なしで使われることがほとんどですが、高級品になるほど蓋つきになっているようです。
トゥッペギの特徴は、どのタイプも分厚く重く作られていることです。直火で加熱して使うものだけに、耐熱性、耐衝撃性、蓄熱性がすぐれている必要があるからです。
韓国でトゥッペギに入って出てくる料理としては、
前述のとおりキムチチゲ(
)、スンドゥブチゲ (
:おぼろ豆腐のチゲ)、
テンジャンチゲ(
:味噌チゲ)などのチゲ類のほか、
ユッケジャン(
:牛肉と野菜の辛いスープ)、サムゲタン(
:朝鮮人蔘入り丸鶏のスープ)、
ソルロンタン(
:牛骨や牛内臓の白濁スープ) など、韓国の伝統的なスープ類が一般的です。
そこへきて最近は、伝統料理以外にもファストフード的なものや無国籍風の料理をトゥッペギに入れて提供する、コラボスタイルが流行っているようです。たとえば、トゥッペギ ラミョン(
:ラーメン)、トゥッペギ トッポッキ(
:餅炒め)、トゥッペギ プルコギ
:焼き肉)、トゥッペギ ケランチム(
:茶碗蒸し)、トゥッペギ トンカス(
:トンカツ)など。シンプルで素朴なトゥッペギは、熱々で提供するさまざまな料理を引きたて、おしゃれ感を演出します。
また、
日本の「釜めし」ようにご飯を銘々のトゥッペギで炊いて炊きたてを提供したり、マッコルリ(
:どぶろく)のような大衆酒を入れるのにもトゥッペギが愛用されています。
最後に、トゥッペギをはじめとする土鍋の扱い方について。新しいトゥッペギを使い始めるときは、トゥッペギ全体が入るくらいの大鍋に米のとぎ汁など澱粉質を含む水とトゥッペギを入れて中火にかけ、沸騰したら火を弱めて数分煮た後、火を止めてそのまま自然に冷ます、いわゆる「目止め」という作業がおすすめです。こうすることにより、トゥッペギの表面にあいている極めて小さな孔が糊でふさがり、割れにくくなります。
またトゥッペギを使った後の洗い方として、洗剤を使わないということがポイントになります。トゥッペギは表面から水がしみこみやすいため、洗剤で洗うと洗剤がしみこんでそのまま乾き、次に使ったときに中の汁ものに洗剤が溶け出てしまうのです。そのため、水または米のとぎ汁、麺のゆで汁などで洗って汚れを落としてから、よくゆすぐのがよいと言われます。
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