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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
今や韓国随一の国民食となったラーメン(
:ラミョン)。
韓国のラーメンは、袋入りの家庭用も、飲食店で出てくるものも、
日本でいうところの「インスタントラーメン」すなわち即席の乾麺がほとんどです。スープにはさまざまな味があり、
全体的に麺が日本のものよりモチモチとしてコシが強いのが特徴です。
そして、ラーメンを食べるときの器といえば、
日本では「ラーメン鉢」ですが、韓国では、鉢に負けず劣らず「ラーメン鍋」(
:ラミョンネンビ)が頻繁に登場します。黄金色のアルマイト製ラーメン鍋は、韓国ドラマなどでもおなじみですが、
独特のスタイルと風情を放っています。
日本では、アルミの調理器具は人体に悪影響を及ぼすとして敬遠される向きもありますが、韓国ではアルミの鍋や食器が庶民の間で幅をきかせています。
アルマイト製の蓋つき両手鍋は、相似形でじつに何段階ものサイズがあり、一人用のラーメン鍋はその最小サイズにあたります。小さくて軽くて、キャンプ道具のような可愛さがあります。取っ手の部分は日本の鍋によくある黒い樹脂製ではなく、本体と同じアルマイト製で、パイプのように中が空洞になっています。本体に比して取っ手がやや大きく感じられるところがまた新鮮でもあり、シンプルなフォルムの美しさや使い勝手のよさ、安価さも手伝って、日本人観光客のお土産としても人気があります。
そんな韓国ならではのラーメン鍋ですが、調理器具と食器を兼ねている点で、チゲの土鍋(
:トゥッペギ)
や、石焼きピビンパの石鍋(
:
トルソッ)
と通じるものがあります。また、たいてい一人前ずつ作って銘々に提供されるところも同じです。
そして、この調理器具と食器を兼ねていること、つまりコンロから食べる人の目の前へ直行し、取り分けたりせずじかに食べる、という異文化的な感覚に、魅力があるのかもしれません。とりわけ庶民度の高いラーメン鍋の場合は、蓋を皿代わりにして、蓋で麺を受けながら食べる場面に遭遇することがあり、興味が尽きません。
もちろん日本でも、釜めしや鍋焼きうどん、ほうとうなど、それに似た性質の料理はありますが、日本では一人用の鍋であってもお椀か小鉢によそって食べるのが行儀のよい食べ方とされており、火から下ろしたての沸き立つ鍋にスッカラッ(スプーン)や箸を入れ、汗をかきかき勢いよく食すという韓国のダイナミックかつフランクな食事風景とは、やはり温度差があります。
ところで、近年流行っている「火鍋」という中国料理は、「鴛鴦鍋」と呼ばれる、
中央が陰陽太極図の形に仕切られた鍋に2種類のスープを別々に入れ、
それぞれのスープで肉や野菜などの食材を煮ながら食べる鍋料理です。韓国でも、「鴛鴦鍋」そっくりの形の鍋が出回るようになり、「ナヌムネンビ」(
)
、「パンバンネンビ」(
)
などと呼ばれています。ナヌムは「分ける」、パンバンは「半々」を意味します。
この韓国のナヌムネンビは中国の「鴛鴦鍋」より軽量・簡易な作りで、「火鍋」のように卓上で火にかけながら小鉢にとって食べるスタイルもありますが、韓国の「ラーメン鍋」式に、コンロから食卓へ運んで鍋から直接食べることのほうが多いようです。
家庭では、味のちがう2種類のラーメンや、ラーメンとおでん、ラーメンとチャジャンミョン(
:韓国式の炸醤麺)、チゲとカルグクス(
:韓国式煮込みうどん)、チゲ2種類など、汁の多い2種類の料理を同時に作って食べるのに、ナヌムネンビが重宝されるようです。
家族で味の好みがちがったり、あれもこれも両方食べたいときにコンロ一口で同時に作れるという便利さと、
ひとつの鍋から家族や恋人、友だち同士で仲良く食べるという近距離で親密な国民性が、
ナヌムネンビをラーメン鍋の延長線上で普及させているのかもしれません。
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