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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
パガジ(
)
とは、韓国で古くから使われてきた庶民的な道具のひとつで、ものを掬 [すく ]うために使う、深みのある入れもののことです。
パガジはもともと、
(パッ)
という丸形の瓢箪 [ひょうたん] を半分にして作ったり、木を彫って作られていましたが、
現在ではプラスチック製のものが主流で、ほかにアルミ製、ステンレス製、ガラス製などがあります。
<韓国の瓢箪[ひょうたん]
(パッ)>
日本で「瓢箪」というと、一般に上下が丸く中央がくびれた、いわゆる「瓢箪形」のものをイメージしますが、これはいわば狭義の「瓢箪」です。ウリ科ユウガオ属に属するヒョウタン種は、アフリカを原産地とする世界最古の栽培植物のひとつで、品種は多岐にわたり、実[み]は上記のくびれた形以外に球形、楕円形、紡錘形、棒状などがあり、大きさも数センチから2メートルまでとさまざまです。
その後、韓国経済の急成長にともなって生活水準が向上すると、無粋で重く、中身の見えないステンレス製品にかわって、おしゃれなプラスチック製品が人気を呼ぶようになりました。形も丸型ではなく、冷蔵庫内の空間をムダなく使える直方体が主流になっていきます。この流れは、パガジに限らずさまざまな食品の保存容器全般に共通することでもあります。
韓国で
(パッ) と呼ばれている瓢箪にも、
やはりさまざまな形状がありますが、パガジ用には直径20〜30センチほどの丸形または紡錘形のものが愛用され、
紡錘形の場合は上部の細長くのびた部分が恰好の持ち手となります。
瓢箪で作ったパガジは、
(パッパガジ ) と呼ばれます。
<
(パッパガジ) の作り方>
@
パガジ用の瓢箪を栽培する。実が成ってから1ヶ月以上、表皮がカチカチに硬くなるまで待って収穫する。
A
ヘタのほうからのこぎりで正確に縦半分に切る。
B
中の種をスプーンで掻き出す。
C
大鍋に湯をわかし、茹でる。
D
冷めてから、内側の柔らかい部分をスプーンでさらに掻き出す。このとき、内壁面の筋を傷つけないように注意する。掻き出した中身は、茹でてナムルにしたり、汁の具として食べることができる。
E
外側の薄皮をこそげ取る。ここでは力いっぱいこそげる。完全に薄皮がとれると、きれいな色が現れる。
F
風通しのよい日陰で3〜4日干す。この工程がもっとも難しく、ややもするとカビが生えてしまう。
<いろいろなパガジ>
パガジは、日本の道具に例えると「柄杓[ひしゃく]」や「片口ボウル」「手桶」「盥[たらい]」などのイメージに近いといえます。用途や材質により、次のようなパガジがあります。
・
(チャル パガジ)
:柄のついた桶。柄杓。手つき片口ボウル。
(チャル) とは柄のこと。
・
(ムル パガジ) : 水を汲む手桶。
(ムル) とは水のこと。
・
(サル パガジ) :
米研ぎボウル。米が研ぎやすいように、細かい線や小さな突起がついていたり、
底や口の付近に水が流れ出るための小穴や切れ目が入っているものもある。
(サル) とは米のこと。
・
(スェジュッ パガジ) :
牛馬に与えるまぐさ(干し草)をすくい上げる、大型の木製ヘラ。
(スェジュッ) とは、まぐさのこと。
・
(チュバン パガジ) :
台所用パガジ。
大きな丸いボウル状のものが多い。
(チュバン) とは厨房のこと。
・
(ヨクシル パガジ) : 風呂用パガジ。
手桶風の形が多い。
(モギョッ パガジ) ともいう。
(ヨクシル ) は浴室、
(モギョッ) は沐浴のこと。
<パガジを使った慣用句>
韓国語には、パガジの出てくる慣用句がたくさんあります。パガジ自体、庶民的な道具であるだけに、パガジを使った慣用句も極めて大衆的な響きがあるのが、興味深いところです。
・
(パガジ クッタ) :
瓢箪を引っ掻く→小言や愚痴を言って大騒ぎする。妻が夫に文句を言う場合に使われます。
ここでいう瓢箪を引っ掻く動作は、上述「パッパガジの作り方」Eの、
瓢箪の外皮を引っ掻いてこそげとる動作と言われます。
・
(パガジ スダ ): 瓢箪をかぶる→一杯食う。だまされて損する。
・
(パガジ シウダ) : 瓢箪をかぶせる→ぼったくる。
大金を吹っ掛ける。
・
(パガジ チャダ) : 瓢箪を蹴る→金銭を失う。困窮する。
・
(アネソ セヌン パガジヌン パッカッテソド センダ) : 家で漏れる瓢箪は外でも漏れる
→できそこないの者はどこへ行ってもろくなことをしない。
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