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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
キムチが「漬ける作業」と同じくらい「熟成行程」が重要だということは、
前回のこのコーナー「キムチ冷蔵庫」で力説いたしました。今
回は、キムチ冷蔵庫に次ぐ必須アイテム、「キムチトン」(
:キムチ保存容器)
について説明しましょう。
元来キムチとは、キムチトッ(
)
と呼ばれる陶器製の大きな甕に入れて土中で保存するものでした。
それが、自家製キムチを漬ける人が激減し、漬けたとしても昔のように大量に漬けることはめったになく、
また住宅事情もすっかり変わってマンション暮らしが一般化したため、キムチは甕ではなく密閉容器に入れて冷蔵庫で保存するもの、
という認識が定着しました。
そして、前回説明したようなキムチ冷蔵庫の嵐が韓国を席巻し、その後もキムチ冷蔵庫の新製品が次々と登場しているものの、これといった目新しい変化が認められなくなると、次に消費者の耳目を集めたのが「キムチトン」でした。
■キムチトンのいろいろ■
キムチを冷蔵庫でよい状態で熟成・保存できるよう考案された、キムチトン。1980年代ごろから姿を見せ始めたステンレス製のキムチトンは、丸型で、蓋には3つの止め具とゴムパッキンがついており、蓋を閉めて金具をパチッと止めると、水もこぼれずしっかり密閉できるようになっていました。現在でもこのタイプは使われています。
その後、韓国経済の急成長にともなって生活水準が向上すると、無粋で重く、中身の見えないステンレス製品にかわって、おしゃれなプラスチック製品が人気を呼ぶようになりました。形も丸型ではなく、冷蔵庫内の空間をムダなく使える直方体が主流になっていきます。この流れは、キムチトンに限らずさまざまな食品の保存容器全般に共通することでもあります。
その後、1998年には4辺の中央についた4つ止め具で蓋と本体を結着させる「四面結着方式」の密閉容器が出現すると、豊富な品揃えでプラスチック密閉容器の全盛時代を迎えます。
ところが、このころからプラスチック中の有害物質が人体に悪影響を及ぼす、いわゆる「環境ホルモン問題」が浮上し、プラスチック容器の安全性を危惧する声が高まっていきました。2000年代に入ると、韓国ではより良い生き方を希求する「ウェルビーイング」旋風とあいまって、消費者はエコロジカルで高い機能性とデザイン性を兼備した高品質の商品を求めるようになり、一般食品容器としては耐熱強化ガラスを使ったガラス製品や、陶磁器製品が多く出回るようになりました。
■トライタン製のキムチトン■
そしてこのころ、画期的な特殊素材「トライタン樹脂」が開発されます。トライタン樹脂は、従来のプラスチックに含まれていた有害物質ビスフェノールA(BPA)を含まず、熱や衝撃はもちろん、酸、アルカリ、塩、油などの薬性に対しても非常に強い耐性を持っており、「ガラスのような透明感・安全性にペットボトルのような柔軟性を兼備した新素材」といわれています。
このトライタン樹脂の登場により、キムチトン市場は一気に様変わりします。食品の中でも特に色とにおいが強く長期保存しなければならないキムチの場合、色やにおいが容器に移らず、外にももれず、安全で、こわれにくく、食器洗浄機でも洗え、容器の外からいかにも美味しそうに見える、トライタン製のキムチトンは、高価格にもかかわらず爆発的に販売数を伸ばしていきます。
この優れた機能性から、
トランタン製のキムチトンはキムチのみならずチャンアチ(
:醤油漬け、味噌漬け)
、ムッチム(
:和えもの)
など、いわゆるミッパンチャン(
)
とよばれるさまざまな保存食を入れて冷蔵庫で保存するのに大活躍しています。
サイズも大小さまざまです。深いもの、浅いもの、取っ手がついたもの、段階的な大きさで入れ子になっているものなど、見るからに使い勝手がよさそうで、お土産に買っていく外国人観光客も多いようです。
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