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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国の伝統料理には、
陰陽五行思想の影響を受けたものが多く見られますが、宮中料理の流れを汲むファヤンジョッ(
:華陽炙、花陽炙)もその代表的なひとつです。
陰陽五行思想は、森羅万象を陰陽の二要素と五行(木火土金水)の五要素に分け、それぞれの組み合わせによって事象を解釈・説明する考え方です。韓国料理に見られる五行思想の影響としては、たとえば五味(甘味・酸味・辛味・苦味・塩味)、五色(黄・青(緑)・白・赤・黒)、五臓(脾臓・肝臓・肺臓・心臓・腎臓)、五方(東・西・南・北・中央)などが挙げられますが、これらの項目を五行思想の関連づけにしたがって分類すると、次のようになります。
【木】
の要素:酸味、青(緑)、肝臓、東
【火】
の要素:苦味、赤、心臓、南
【土】
の要素:甘味、黄、脾臓、中央
【金】
の要素:辛味、白、肺臓、西
【水】
の要素:塩味、黒、腎臓、北
では、五行のうちでも五色をバランスよく配したファヤンジョッという料理について、見てみましょう。
ファヤンジョッは、青(緑)・赤・黄・白・黒の色の食材6〜7種類を、1cm弱角×長さ6cmほどの棒状に切りそろえ、それぞれ下ごしらえをして彩りよく串に刺した料理です。青い食材にはきゅうりが、赤はにんじん、黄は卵、白は桔梗の根やごぼう、卵白、黒は牛肉やしいたけがよく使われます。一般的な作り方は、次のとおりです。
@
牛肉(赤味肉)は8mm厚さに切ってしょうゆ、砂糖、おろしにんにく、こしょうなどで下味をつけ、フライパンで両面焼いて8mm幅、6cm長さに切りそろえる。
A
干ししいたけはもどして8mm幅に切り、牛肉同様に下味をつけてフライパンで炒める。
B
桔梗の根(またはごぼう)、にんじんは8mm角×6cm長さに切りそろえて下茹でし、塩、ごま油でさっと炒める。
C
きゅうりも同様に切って塩でしんなりさせ、水気をふいてごま油で炒める。
D
卵は卵黄と卵白に分け、塩少々を加えて溶きほぐし、別々に8mm厚さに焼いてから同様に切りそろえる。
E
@〜Dを1切れずつ彩りよく竹串に差し、器に盛りつける。
F
松の実をみじん切りにし塩とスープを加えて「松の実ソース」を作り、上にかける。
宮中の伝統的なファヤンジョッは、
串の持ち手を外側に向けて丸皿にぐるりと放射状に盛りつけ、中央にはホンハプチョ(
:紅蛤炒)という、ムール貝を牛肉とともに甘辛く煮つけたものをこんもりと添えるスタイルが一般的でした。
また、このように五色鮮やかな「カクセク ファヤンジョッ」(
:各色華陽炙)以外にも、あわびを使ったセンボッファヤンジョッ(
)、白身魚を使ったオファヤンジョッ(
)、手長ダコを使ったナッチファヤンジョッ
(
)、牛の胃袋を使ったヤンファヤンジョッ(
)やチョニョプファヤンジョッ
(
)、冬瓜を使ったトンアファヤンジョッ
(
)などが存在したことが、李氏朝鮮王朝時代の宮中行事を記録した「儀軌」
(
:ウィゲ)に残されています。
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