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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
トゥブソン
は韓国独特な豆腐料理のひとつで、
細かくつぶした豆腐に具を混ぜこみ、
色とりどりの具をのせて蒸し上げた、宮中料理の流れを汲む上品な一品料理です。
主材料となる豆腐以外に、鶏のムネ肉やささみ、あるいは海老など淡白ながら旨味の出る材料を使うことが多く、味つけは塩、こしょう、ごま油を中心にあっさりと仕上げ、最後に酢醤油をつけてさっぱりといただきます。
<一般的な作り方>
@
豆腐(木綿)を布巾に包んで重石をし、半分くらいになるまで水気をぬいた後、ザルでこすか細かくつぶして下味をつける。
A
鶏肉を小さな薄切りにし(ひき肉の場合はそのまま)塩、こしょう、ごま油、生姜汁、おろしにんにくなどで下味をつける。ほかに、海老や椎茸、葱、にらなどの具を入れることもあり、その場合も具は薄く小さく切る。
B
上にのせる具を準備する。卵は白身・黄身別々に薄く焼いて錦糸卵にする。岩茸やきくらげ、赤ピーマン、にんじん、さやえんどうなどを使う場合は、形をそろえて千切りまたはみじん切りにする。糸唐辛子もよく使われる。
C
@とAを混ぜ合わせ、流し缶に隙間なく詰めるか布巾の上に平らに熨[の]し、Bの具を彩りよく散らして、蒸し器で20分ほど蒸す。
D
冷めてから一口大に形よく切り分け、器に盛って酢醤油を添える。
従来は、厚さ1〜2cmに熨して蒸しあげたものを、2〜3cmの長方形に切りそろえて盛りつけるのが定番でしたが、近年はフュージョン化して工夫を凝らしたおしゃれな盛りつけが目を引きます。三角に切りそろえたもの、セルクルリングに詰めて丸形に蒸し上げたもの、花形に型抜きしたもの、簀巻きして蒸し輪切りにしたもの(断面が楕円形)など、様々な形が見られます。上にのせる具も、のせてから蒸すと色あせてしまうため、切り分けて盛りつけるときにのせる場合も多いようです。その場合、加熱を避けられるため、スプラウトや魚介、ナッツなど斬新な材料を使った演出や、層状に重ねた豆腐の間々に色鮮やかな具をはさんだり、サラダ感覚で生野菜を散らしたりと、生の素材ならではのみずみずしい盛りつけが見られます。
トゥブソン自体は伝統的な韓国料理ですが、トゥブソンの持つ淡白で品格あるイメージが、現代韓国の健康志向・おしゃれ志向と結びついて、洗練された高級感のあるフュージョン料理として受け入れられていることがわかります。
ところで、トゥブソンは漢字で「豆腐膳」と書きますが、この「膳」(ソン:
) いうカテゴリーついて少し触れてみましょう。
「膳」(ソン)は、韓国料理の調理法の中でも、特に概念が曖昧で定義しづらく厄介な存在といえます。具体的な例で見てみると、トゥブソン以外に次のようなものがあります。
・きゅうりのソン (
:オイソン)
・朝鮮かぼちゃのソン (
:ホバッソン)
・なすのソン (
:カジソン)
・唐辛子のソン (
:コチュソン)
・冬瓜のソン (
:トンアソン)
・魚のソン (
:オソン)
・牛胃のソン (
:ヤンソン)
・鰊[にしん]のソン (
:チョンオソン)
料理の内容を見てみると、主材料に切り込みを入れ具をはさんで蒸した(または煮た)ものや、中をくりぬいてひき肉などの具を詰め焼いたり煮たりしたもの、主材料と具を層状に重ね合わせて煮含めたもの、具を混ぜ込んで蒸したもの、などとなっており、料理名も「ソン」と「チム」(
:蒸しもの)がしばしば混用されています。
このように「ソン」はもとの概念が曖昧なため、日本語に訳すにもぴったりとした語があてはまりませんが、解説的にいえば、さしずめ「主に植物性の材料を使い、具をはさんだり混ぜ込んで加熱した、手間のかかった上品で美味しいおかず」といったところでしょうか。
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