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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
お粥は、韓国の食文化において日ごろから身近な位置にあり、朝食や軽食として日常的に好んで食べられる料理のひとつです。シンプルながらも滋養があり、ものによっては高級感のただよう韓国のお粥は、日本の一般的な「病人食」のイメージとは少しちがうといえます。
ソウルの街角には、野菜粥、きのこ粥、ごま粥、鶏粥、牛肉粥、海鮮粥など多様なメニューをとりそろえた粥専門店があちこちにあり、テイクアウトや出前にも対応するチェーン店が増えつつあります。
そんな多彩な韓国のお粥の中でも、とりわけ高級視されているのが
、あわび粥
(
:チョンボッチュッ)です。
あわび粥は、薄切りにしたあわびの身と緑色の肝をごま油で炒め、水につけておいた米も加えて炒めた後、水を注いで蓋をしてふっくらと炊き上げ、塩またはしょうゆで味をととのえます。肝の色が出て、お粥全体が緑褐色を帯びているのが特徴です。器によそって生卵を落としたり、ちぎった海苔やごまをあしらうこともあります。また、あわびの身を最初から炒めず、最後に入れてさっと火を通すことで、ほどよい歯ごたえと風味を残すこともあります。
あわびは活きたものを調理するのが基本ですが、鮮度が悪かったり冷凍ものを使う場合は肝を入れないこともあり、その場合はごま油の色がうっすらとついた乳白色の仕上がりとなります。
あわび粥は、李氏朝鮮王朝時代の王室記録である『儀軌』に、
「全鰒膏飲」という料理名で登場することから、
当時の宮中でその類のものが作られていたことがわかります。「全鰒」は
(チョンボッ)すなわちあわびのこと、「膏飲」は
(コウム)と読んで、粒のないポタージュ状のお粥をさします。
ちなみにこの『儀軌』には、お粥以外にも炒めもの、煮つけ、刺身、串焼きなど幾種類もの調理法であわびが登場し、滋味深いこの食材が頻繁に王様の御膳に上っていたことが伺えます。
次に、あわびの栄養価を見てみると、身には良質なたんぱく質とビタミンB群、ビタミンK、鉄分やマグネシウムをはじめ各種ミネラルが豊富に含まれる一方で、肝は肝で身を上回る栄養価があることがわかります。これは、あわびの食餌であるワカメやアラメなどの海藻類に由来するポリフェノール、アルギン酸、ヨウ素などの優れた薬効成分が、肝に凝縮されているためです。さらに古くは貝殻も、乾かして粉末にしたものを漢方で「石決明」といって、肝臓や眼に効く民間生薬とされてきました。
このように高級食材として一目置かれるあわびは、韓国では済州島[チェジュド]が古くからの名産地で、李氏朝鮮王朝時代は済州島から宮中への献上品として寄せられていました。2014年現在、韓国のあわびの漁獲量は、中国に次いで世界第2位を誇ります。
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