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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
クジョルパン
(
) は漢字で「九節(折)板」と書き、盛りつけに使われる正八角形の漆器名がそのまま料理名になったものです。
このクジョルパンという漆器は、中央の正八角形とそのまわりに台形が八つ、
合計九つの箱に区切られており、中央には小麦粉の薄皮が、
八つの箱にはそれぞれ色とりどりの具が盛りつけられます。一見して美しく品格あるこの料理は、
「神仙炉[シンソルロ]」と双璧をなす韓国宮中料理の筆頭といえます。
では、この料理に使う材料を見てみましょう。
中央の箱には、前述のとおり小麦粉の薄皮が入ります。
この薄皮はミルチョンビョン(
) といって、水でといた小麦粉の生地を、
油をひいたフライパンに丸く流し入れて形よく焼き上げます。
最近では、この生地をほうれん草やにんじん、きいちごの汁などで色づけしたカラフルな薄皮も見かけるようになりました。
こうして焼けた薄皮は、冷めてからきれいに重ねて盛りつけます。
薄皮どうしくっつかないように、一枚ずつ間に松の実や春菊の葉などをはさむこともあります。
では次に、八つの箱に入れる具材です。ここでは材料の色が重視されます。
「青」(緑)は芹、きゅうり、さやえんどうなど。「赤」はにんじん、赤ピーマン、えび、かになど。「黄」は卵黄または全卵で焼いた錦糸卵、筍など。「黒」は岩茸、椎茸、牛肉、干しなまこなど。「白」は卵白で焼いた錦糸卵、もやし、大根、桔梗の根、いか、あわびなど。
この青・赤・黄・黒・白を「五方色」(
: オバンセッ)
といいますが、中国の陰陽五行思想にもとづくこの五方色は、
現代においても韓国文化の随所にその影響を見ることができます。
五方色とは、文字どおり五つの方角にそれぞれ色を配したもので、正確には東が青、西が赤(朱)、南が白、北が黒(玄)、中央が黄となります。
どちらかというと聞き覚えのある「青龍」「朱雀」「白虎」「玄武」「黄麒麟」などのことばは、
この五方色に霊獣を配したものだということがわかります。
さて、こうして選ばれた八種類の具材は、それぞれ細長く切りそろえ、炒める、煮る、茹でるなどの下ごしらえと味つけをして、台形の箱に美しく盛りつけて仕上げられます。
宮中料理にルーツを持つクジョルパンは、現代の韓国でも高級な伝統料理店や宮中料理専門店で、宴席の最初にしばしば登場します。
いただき方は、薄皮を一枚自分の取り皿にとり、八種類の具を少しずつまんべんなくのせてくるりと薄皮で巻き、添えられた辛子じょうゆや酢じょうゆにつけていただきます。美しく巻いて一口で食べられるよう、具を欲張りすぎないことがポイントです。
最後に、同じ「九節板[クジョルパン]」
の漆器に乾きものを盛り合わせた「マルン クジョルパン」(
)をご紹介しましょう
。これは一般に酒席の最初に供されるもので、くるみ、干し柿、炒った銀杏、
松の実を刺した干しなつめ、干しいか、干し鱈、揚げ昆布、栗、ごま菓子など九種類の乾きものが整然と盛りつけられています。
マルン クジョルパンは酒の肴として少量つまむものだけに
、「九節板」の漆器の中でも比較的小さめのものが使われます。
また、漆器の中が五つに区切れた「五節板[オジョルパン]」や、七つに区切れた「七節板[チルジョルパン]」が使われることもあります。
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