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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国で「トッポッキ」 (
) と呼ばれる料理には、いくつかの種類があります。
一つ目は、トッポッキ用の細長い餅を真っ赤なコチュジャンソースにからめた甘辛いタイプ。一般に「トッポッキ」というとこれをさします。
二つ目は、別名「宮中トッポッキ」 (
)
ともいい、
野菜や肉などの具がたくさん入った、
しょうゆ色で辛くないタイプ。
そして三つ目は、近年流行している鍋スタイル。
日本語では「トッポギ鍋」と呼ばれていますが、韓国語ではただの「トッポッキ」、
あるいは「即席[チュクソッ]トッポッキ」 (
) 、「新堂洞[シンダンドン]
トッポッキ」 (
) などと呼ばれます。今月のテーマはこの「トッポギ鍋」です。
まずこの料理の特徴は、具だくさんの「鍋もの」だということです。
韓国の鍋料理でよく使われる「パン」(
)、
すなわちフライパンを両手鍋にしたような大鍋にグツグツと煮上がった「トッポギ鍋」は、赤褐色のとろりとした煮もののようにも見えます。
では、作り方を見てみましょう。「即席」と言われるだけあって、豪華な見た目の割に下ごしらえの手間が少なく、材料をすべて鍋に入れてソースをかけ(このソースが秘訣ですが)、卓上で煮たらできあがりです。
材料としては、次のようなものが入ります。
・
トッポッキ用の細長い餅。
・
チョルミョン(
) と呼ばれる
、コシの強い小麦粉の太麺。あるいはタンミョン(
) と呼ばれる、さつまいも澱粉製の太い春雨を使うことも。
・
ラーメン(インスタントラーメン用の乾麺)
・
オデン(
) またはオムッ(
) と呼ばれる、薄型のさつまあげ。
・
マンドゥ(
)、
ヤキマンドゥ(
) ティギムマンドゥ(
) などと呼ばれる、いわゆる揚げ餃子。
春雨がたくさん詰まった既製品がよく使われます。
・
これと似ていますが別物で、
天ぷらあるいはフリッター状の揚げもの。「不格好」を意味するモンナニ(
)
あるいはモンナニマンドゥ(
)、モンナニティギム(
) などという呼称に、
韓国的なユーモアが感じられます。
・
ゆで卵。殻をむいて丸ごと入れます。
・
にんじん、ねぎ、キャベツ、玉ねぎ、豆もやし、きのこなどの野菜類。
・
ほかに、ムール貝やえび、
いかなどのシーフードを入れた海鮮タイプ、ハムやソーセージを入れた「部隊[プデ]チゲ」仕立て、
スンデ(
) と呼ばれる腸詰めを入れたもの(別名、トクスニ:
)、
肉を入れたもの、とろけるチーズを入れたもの、などさまざまです。
次に、味の決め手となるヤンニョムジャン(合わせ調味料/ソース)の材料ですが、この配合こそが工夫の凝らしどころといえましょう。
特徴としては、
甜麺醤(韓国ではチュンジャン:
と呼ばれる)とコチュジャンがベースとなっている点。
ちなみに甜麺醤はもともと韓国で大変なじみのある調味料で、韓国式大衆中華料理チャジャンミョン(
:炸醤麺)の基本味でもあります。
ほかに砂糖、おろしにんにく、水飴、オリゴ糖、粉とうがらし、しょうゆ、オイスターソースなどを配合し、独特な甘辛いヤンニョムジャンを作ります。
材料の準備ができたら、浅くて大きな鍋に材料をドンッと入れ、ヤンニョムジャンをとろりとかけ、煮干しなどでとったダシ汁を注いで卓上で火にかけます。
鍋底にくっつかないよう軽く混ぜながら煮ていくと、山盛りだった材料も火が通るにつれて汁に浸るようになり、それとともにヤンニョムジャンがとけて鍋一面に赤褐色が広がります。はじめシャバシャバしていた汁も、餅や麺が吸って全体にとろみが出てきます。餅や麺を下ゆでせず、ヤンニョムジャンの汁で直[じか]に煮ていくため、味のしみこみがよく、のびにくくコシのある仕上がりとなります。
卓上で煮る鍋の宿命として、食客は美味しそうな鍋を見ながら今か今かと生唾を飲んで待たなくてはなりません。いきおい、食べ始めると超スピードで料理はなくなっていきます。そして、鍋底にわずかな汁と具の破片が残ったところで、第二弾のお楽しみが待っています。ちぎった海苔やコーンを入れ、汁が少なければ少し足し、ご飯を入れてかきまぜるとチャーハンのできあがり。これが、韓国鍋の定番の食べ方でもあります。
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