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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
ピョンス
は、
韓国で暑い季節に食べられる冷たい水餃子のことです。朝鮮半島中部に位置する古都、
開城 [ケソン] では古くから饅頭 [マンドゥ] (餃子)の類がよく食べられてきましたが、マンドゥの仲間であるピョンスも、開城の名物料理に挙げられます。
韓国の伝統的な年中行事のひとつに、「流頭節[ユドゥジョル]」という節句があります。これは、旧暦6月15日(新暦では7月半ばごろ)、東方へ流れる清流で頭と体を洗い、祭祀を奉じて「節食[チョルシッ]」と呼ばれる節句料理を食べて、無病息災を祈願するものでした。そしてこのときの「節食)」には、収穫したての麦でつくった団子や麺、餅などと並んで「ピョンス」が食べられてきました。
古い文献をみると、1870年ごろ記された『名物紀略[ミョンムルギリャッ]』では、「
(ピョンシッ)→ピョンスに変わる。
小麦粉の生地を四角く切り、具を包んでマンドゥの形に作ったもの」と説明されています。
また、1890年代に書き著された料理書『是議全書[シウィジョンソ]』では「小麦粉のマンドゥ」の項に、「これは片(ピョン)水(ス)ともいい、小麦粉を水でこねた生地を薄くのばし真四角に切るが、小さすぎないように切る。具はマンドゥの具のように作って皮にのせ、ふちをぴたりとつけて四角く包む。ゆで方もマンドゥと同じ」と記されています。
では、現代のピョンスの作り方をみてみましょう。
皮は、従来どおり小麦粉をこねて作ることもありますが、市販の皮を使って手軽に作ることも多いようです。
具には、ひき肉、エホバッ(朝鮮かぼちゃ)、椎茸、豆腐、もやしなどを使います。ひき肉は牛、豚、鶏を混ぜ合わせたり、冷たく仕上げたときにしつこさが残らない牛、鶏だけにすることもあります。エホバッは細切りにして塩でしんなりさせ、水気を絞って炒めておきます。
エホバッのかわりにきゅうりを使うこともあります。もやしを入れる場合は、さっと茹でて刻み、水気を絞ります。キムチを刻んで入れることもあります。こうして下ごしらえした材料を混ぜ合わせ、塩、こしょう、しょうゆ、ごま油などで下味をつけます。
具ができたら、皮に包みます。ピョンスは、四辺をぴたりとつけてひだを作り、風車のような独特な形に包みます。それを茹でるか蒸すと、薄い皮が半透明になり、中のエホバッの緑色が涼しげに見えるのも、ピョンスならではの特徴です。
茹でるか蒸して火が通ったら、
ピョンスを冷たい水に
つけたり氷水に浮かべて冷やし、
酢じょうゆ(チョガンジャン:
) や薬味酢じょうゆ
(ヤンニョムチョガンジャン:
)
につけていただきます。
また最近では、冷やしたピョンスを冷たいスープ(ネングッ:
) に入れて食べることもあります。
つるりと冷たいピョンスは、韓国の夏の風物詩のひとつです。
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