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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
冷麺(
:ネンミョン)は、韓国の代表的な冷たい麺料理のひとつです。
冷麺は、コシの強い独特の麺が特徴で、原料にはそば粉やじゃがいも澱粉、さつまいも澱粉、小麦粉、葛粉などがさまざまな配合で使われます。製麺方法からみると、小さな穴のたくさんあいた機械に麺生地を入れ、高圧をかけて押し出す「圧搾麺」に分類されます。
冷麺はもともと、朝鮮半島の北部地方でよく食べられる郷土料理でしたが、朝鮮戦争期(1950〜53)に戦火を逃れて北部から避難してきた人々によって全国的に広まり、現在に至っています。
現在、韓国では本格手打ち麺を掲げる専門店の格式ある冷麺から、粉食店 [プンシッチョム] とよばれるファストフード店やフードコートなどで出てくる廉価な冷麺、さらに家庭でササッと作れるインスタント冷麺まで、さまざまな冷麺があり、人々に親しまれています。
冷麺は麺や具、汁の特徴などにより、ざっと次のような種類に分けることができます。
< 平壌冷麺 [ピョンヤンネンミョン] >
冷麺といえば平壌[ピョンヤン]冷麺。
冷麺の仲間はいろいろありますが、一般に「冷麺」といえば、この平壌式ムル冷麺をさします。
ムル
とは韓国語で水、汁を意味し、「ムル冷麺」の名のとおり、トンチミ
(
:大根を丸ごと塩水に漬けこんだキムチの一種)の発酵した汁と、
牛や鶏のスープとを混ぜて作った、さっぱりと爽やかな汁が身上です。そば粉を主原料とする麺足は、
硬いながらも比較的容易に噛み切れるのが特徴です。形よく巻いた麺の上に、ゆで肉、梨、
キムチ、きゅうり、ゆで卵などの具を積み上げるようにして盛りつけ、冷たい汁を注ぎます。
< 咸興冷麺 [ハムフンネンミョン] >
朝鮮半島北東部、
咸鏡道[ハムギョンナムド]の港町、
咸興
は独特の「フェ冷麺」で有名です。
フェ
とは刺身のことで、
エイやカレイなどの刺身を甘辛いヤンニョムで和え、
麺にのせるのが特徴です。
ほかに、
きゅうりや梨、ゆで卵などをのせることもあります。汁はほとんどなく
、
麺全体が真っ赤に染まる甘辛いヤンニョムが味の決め手となります。
また、特に刺身は使わなくても、
ゆで肉やゆで卵、野菜、キムチなどをのせたバージョンも多く、これらを総じて「咸興冷麺」、
「ピビムネンミョン」
、
「ピビムクッス」
などと呼んでいます。
このタイプの冷麺は、さつまいもやじゃがいもを原料とする、
きわめてコシの強い麺も特徴のひとつです。
< 晋州冷麺 [チンジュネンミョン] >
冷麺のふるさとの多くが朝鮮半島北部にありますが、南部地方にも慶尚南道・晋州[チンジュ]に古くから伝わる冷麺があります。晋州冷麺の特徴は、そば粉を多く配合した麺と、具に牛肉のジョン(衣焼き)や薄焼き卵、きゅうりなどの細切りをのせる点です。また、伝統的な晋州冷麺の汁には、牛のスープではなく、煮干しや貝類、干し鱈などでとったスープを冷やして使います。
< その他の冷麺 >
これらの特徴ある代表的な冷麺以外にも、麺の原材料や具の種類、汁やヤンニョムのスタイルによって朝鮮半島にはさまざまな冷麺が存在します。
・
ヨルム冷麺
:大根の間引き菜(=ヨルム)のキムチをのせた冷麺。夏場によく食べられる冷麺で、ムル冷(ネン)麺(ミョン)(汁冷麺)の一形態。
・
チッ冷麺
:葛(=チッ)粉の細麺が特徴。ムル冷(ネン)麺(ミョン)の一形態で、みぞれ状に凍らせた汁をかけることが多いようです。
・
ミル麺
:小麦(=ミル)粉の細麺が特徴。この麺を使って、ムル冷麺、ピビム冷麺ともに作られています。もともと、
小麦粉で冷麺の麺が作られることはありませんでしたが、朝鮮戦争期に北部地方から釜山近辺へ避難してきた人々が、
安価なアメリカ産小麦粉を使って郷土食の冷麺を作ったのが始まりといわれます。
ミル麺の麺はそうめん状の細麺ですが、圧搾製法に由来する独特のコシの強さと滑らかさが人気を呼び、
現在では「釜山ミル麺」としてすっかり名物料理になりました。
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