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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国の大衆的な麺料理のひとつに、カルクッス
があります。
カル
は包丁を、クッス
は麺類を意味し、
小麦粉の生地を包丁で細く切った「切り麺」を意味することばが、そのまま料理名になりました。
カルクッスのイメージを一言でいうと、ダシのよくきいた塩・しょうゆ味の煮込みうどん、といえます。もっとも、添えられたヤンニョムジャン(薬味だれ)をかけると一転して真っ赤なスープに変わり、一杯で二種類の味が楽しめるのは、韓国料理の食べ方の一典型かもしれません。
さて、カルクッスのポイントとなるダシですが、一般的には煮干しや昆布でダシをとることが多く、ほかに鶏や牛を使うこともあります。また、あさり、干し海老、干し鱈、「紅蛤[ホンハプ]」とよばれる小型のムール貝、牡蠣などを具に入れることも多く、そこから出た海鮮の旨味が複合して味わい深いスープを演出します。
そのほかの具としてはズッキーニ、葱、じゃがいも、きのこ、にんじんなどが使われ、仕上げにはよくもみ海苔があしらわれています。一方で、具をほとんど入れないシンプルなカルクッスもあります。
さて、次にカルクッスの麺ですが、小麦粉に卵、塩、水を加えて硬めに打ち、麺棒で薄く延ばして折りたたみ、端から包丁で細長く切って作ります。日本の手打ちうどんのように太さやコシの強さを強調したものというよりは、太くもなく細くもなく、たとえれば「冷や麦」や「沖縄そば」の麺のようなイメージといえます。今日では、手打ち麺に代わって製麺所で作られたカルクッス用の生麺が市販されており、それを使うのが主流になっています。
では、カルクッスの作り方をざっと見てみましょう。材料、手順ともいろいろなものがありますが、おおよそ次のような流れになります。
1.
ダシをとる。
2.
ヤンニョムジャン(薬味だれ)を混ぜ合わせる。また、最後に具をあしらって仕上げるタイプの場合は、具をあらかじめ作っておく。
3.
ダシを火にかけ、火の通りにくい具から順に入れていく。
4.
頃合いをみて生麺をほぐし入れ、煮込む。
5.
葱や貝などを入れ、ほどよく火が通ったところで火を止める。
6.
鉢によそい、海苔やすりごまをあしらう。ヤンニョムジャンを添える。
市販の生麺を使えば家庭でも手軽にカルクッスが作れますが、韓国では外食のカルクッスにも根強い人気があります。
そもそもカルクッスの歴史は意外に新しく、1960年代にその発祥が見出されます。当時、韓国では米不足などによる困難な食糧事情を解決するべく、政府が「粉食[プンシッ]」といって輸入小麦粉で作った食べものを奨励したことから、カルクッスをはじめマンドゥ(餃子)、蒸しパン、ラーメン、スジェビ(すいとん)などを出す「粉食[プンシッ]店(チョム)」が街角に次々と現れました。その後、粉食店(チョム)にはトッポッキ(餅炒め)、キムパプ(海苔巻き)、スンデ(腸詰)、おでんなどのメニューも加わり、庶民が小腹を満たすために気軽に立ち寄れる屋台あるいは簡易食堂として発展し、近年にはチェーン店も多く見られるようになりました。
その一方で、小規模なカルクッス専門店として成功しているケースも少なからずあるようです。そのような専門店はたいてい、「手打ち麺」を意味する「ソンカルクッス」と銘打ち、自家製の麺やスープにこだわって、メニューは少なくても家庭的な雰囲気と手づくりの変わらぬ味で常連客の期待に応えています。
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