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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
ホットッ
は、小麦粉や米粉の生地で黒砂糖のあんを包み多めの油で揚げるように焼いた、韓国の庶民的なおやつです。
「ホ」は漢字で「胡」と書き、「トッ」は韓国語で「餅」を意味します。
寒い季節になると、
韓国の街角のあちこちに屋台の
ホットッ屋さんがあらわれます。
流れ落ちるように柔らかいホットッの生地で
黒砂糖のあんを器用に包み、
たっぷりの油がひかれた
鉄板にすべり入れると、ホットッは膨らみながら
縁のほうから焼けてきます。
裏返してホットッヌルギ
という丸い器具で上から押さえるようにして
形をととのえ、さらに何度か
裏返しながら丸くきれいなホットッに仕上げます。
油の中を泳ぐように焼かれていくホットッは、大きなドーナツあるいは揚げパンのようにも見えます。アツアツのホットッを紙にはさんで手渡しされたお客さんは、中からとろりと出てくる黒蜜に口をやけどしないよう気をつけながらかぶりつきます。1個500ウォンほどで大きなホットッを食べ終わるころには、お腹も心もぽかぽかです。
ホットッのルーツは、19〜20世紀はじめごろ中国から朝鮮半島へ渡ってきた華僑の人々が作り、街角で売ったことに遡るといわれます。食べものが豊かではなかった当時、安価でおいしいホットッは華僑のみならず韓国の人々の心もたちまちつかみ、激変の時代を経て現在まで変わらぬ人気を誇っています。ふんわり、あるいはもちっと発酵した生地から漂う酵母の香り、中でとろりと溶けた黒砂糖とシナモンの風味、そして幾度となく使い回された油をたっぷり含んだ独特のボリューム感…。
ホットッというと伝統的な屋台のイメージがありますが、屋台以外にも路地に面して通りがかりの人を匂いで引き寄せる小さなホットッ屋さんや、市場の中のエネルギッシュなホットッ屋さんなど、季節を問わず行列のできる名物店もあります。また最近では、お洒落なカフェやデパート、モール街や空港のフードコートなどでもホットッを目にするようになりました。
種類も多様化しています。伝統的な黒蜜あん以外にチーズ、かぼちゃ、五目野菜、キムチ、チャプチェ、シーフードなどの具を入れたものや、生地に抹茶やよもぎ、とうもろこし粉を練り込んだものなどさまざまな工夫が凝らされています。お洒落な店舗では、甘系の種類を中心に鋳型に生地を流し込んで焼いた、ワッフル状あるいは最中[ もなか]状の上品なホットッを展開し、高級感を出しています。その一方で、市場などではおかず系の具を中心に、日本のカレーパンやピロシキのような揚げものスタイルでボリュームある間食を低価格で提供し、人気を集めています。
豊かな時代を背景に、伝統的なホットッがフュージョン化しつつあります。
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