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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
ピンデトッ
は、
緑豆を挽いて作った生地に葱やキムチ、豚肉、わらびなどの具を入れ、油をひいた鉄板やフライパンで両面焼いた、
お焼きの一種です。韓国料理の調理法では、ジョン
、プッチム
の類に入り、
ノットゥピンデトッ (
:緑豆ピンデトッ) 、あるいはノットゥジョン (
:緑豆のジョン) ともいいます。
ピンデトッの特徴は、緑豆の独特な生地にあります。
緑豆は小豆と同じササゲ属の豆で、日本では発芽させて「もやし」
として利用することがほとんどですが、
韓国では、皮をとり除いた澱粉を使ってさまざまな料理や餅菓子を作ります。
ピンデトッの場合、
粗く挽き割った緑豆を一晩水につけ、
手でこすりながら浮いてくる皮をきれいにとり除いて、
残った澱粉部分をミキサーにかけてとろとろにしたものが、
基本の生地となります。ここまでの作業には
たいへんな手間がかかりますが、近年では皮をむいた緑豆や、
ピンデトッカル(
:ピンデトッ粉)といって調合済みの緑豆粉製品も市販されており、
手軽に作れるようになりました。
多めの油でカリッと焼き上げたピンデトッは、老若男女を問わず韓国国民の人気を集める大衆料理で、酒の肴やおやつ、ご飯のおかずとしてよく食べられます。特に焼酎やビール、マッコルリとの相性が抜群です。
<ピンデトッの由来>
さて、「緑豆 [ ノットゥ ] ジョン」が一般にはなぜ「ピンデトッ」と呼ばれるのか、名前の由来にはいくつかの説があります。
ピンデトッのルーツをたどってみると、李氏朝鮮王朝時代の宮中宴会料理を記録した『迎接都監儀軌 [ ヨンジョプトガムウィゲ ] 』
1634年の項で出てくる「餅煮 [ ピョンジャ ] 」が、
文献上最古の記述とされています。
続いて、1670年ごろ民間女性によってハングルで記された『飲食知味方[ウムシッチミバン]』には
、
(ピンジャポプ) という名で出ており、
後に「餅者法」「貧者法」などの漢字が当てられるようになりました。
1815年ごろ書かれた家庭百科書『閨閤叢書 [ キュハプチョンソ ] 』
にも
(ピンジャ) が出てきます。
その後、餅を意味する韓国語
(トッ)がついて
(ピンジャトッ) となり、
音韻と表記が変化して
(ピンデトッ) →
(ピンデトッ) となったものと思われます。
もともと、
ハングルができる前に中国の漢字の音を借りて「餅煮 [ ピョンジャ ] 」と記されたものが、「貧者餅 [ ピンジャトッ ] 」と表記されるようになった背景には、
貧しい人々でも満腹になる安価でボリュームある食べものという意味合いがあった、
という説があります。また、この類の料理をさす中国語「
餅」が「蝎餅」と誤記されて伝わり、
韓国語に訳して蝎→
( ピンデ:南京虫の意) となった、
という説もあります。さらには、かつてピンジャトッ売りが多くいたソウル市 貞洞 [チョンドン] は、
南京虫の多い地域だったため「ピンデコル」(南京虫村の意) と呼ばれ、そこからピンデトッの名がついた、という説もあります。
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