キーワードで見る食文化
韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。

フェ
スペーサー

牡蠣のフェ(クル)
  フェ とは、いわゆる刺身、なます(膾)、タタキのたぐいをさします。
「フェ」の定義づけはやや曖昧なところがあり、人により解釈が分かれる部分もありますが、以下に韓国の関連文献から「フェ」に関する記述を抜粋してみますので、フェがどのようなものかイメージしてみてください。

『韓国の味』(姜仁姫[カンイニ]著/1987)
「フェとは魚介類や肉、野菜などを切って生で食べたり、あるいはさっと茹でてとうがらし酢味噌、芥子汁、酢じょうゆなどにつけて食べる料理。フェは生で食べるものだが、さっと茹でて食べることもあり、こうした調理法によって生膾[センフェ] と熟膾[スッケ] に分けられる。また、材料別には魚介類のフェ、肉類のフェ、野菜類のフェなどがある」
『韓国の飲食用語』(尹瑞石[ユンソソッ]著/1991)
「魚貝類の身、牛の赤肉、レバー、センマイ(牛の第三胃袋)などを生食用に仕上げた料理。たいがい、細切りにして唐辛子酢みそ、芥子だれ、塩こしょうにつけて食べる。魚をさっと茹でて仕上げたフェを熟膾[スッケ] といい、貝類に酢やしょうゆ、塩などで味つけしたフェを酢膾[チョフェ] という。また、コチュジャン(とうがらし味噌) やヤンニョム(薬味だれ) で和えた場合はムッチム(ムッチム :和えもの) という」。
それでは、生膾[センフェ] と熟膾[スッケ] にわけて、具体的な料理をみてみましょう。
<生膾[センフェ]>
センソンフェ(魚介の刺身) トミフェ(鯛の刺身)
オジンオフェ(いかの刺身)
魚介の刺身。いわゆる日本の「刺身」に近いもの。
トミフェ(トミフェ:鯛の刺身)、ミノフェ(ミノフェ:ニベの刺身)、クァンオフェ(クァンオフェ:平目の刺身)、パンオフェ(パンオフェ:ぶりの刺身)、インオフェ( インオフェ:鯉の刺身)、チョゲフェ(チョゲフェ:貝の刺身)、クルフェ(クルフェ:牡蠣の刺身)、オジンオフェ(オジンオフェ:いかの刺身)、ナッチフェ(ナッチフェ:てながだこの刺身)、チョンボクフェ(チョンボクフェ:あわびの刺身)など、じつにさまざまなセンソンフェがあります。 チョコチュジャン(とうがらし酢味噌)や、わさび醤油につけて食べます。

ユッケ(牛刺し)
牛刺し。牛の赤身肉を細切りにして塩やしょうゆ、ごま油、にんにくなどで和えたもの。
中央に卵の黄身をのせたり、松の実のみじん切りをあしらったり、梨の細切りを添えたりして仕上げ、それらを混ぜて食べます。牛肉の中でも、特に内もも中央部分の「シンタマ」という、柔らかくて新鮮な赤身部位がユッケに適しています。

チョニョプフェ(センマイ刺し)
センマイ刺し。センマイとは、牛の第三胃袋のこと。
新鮮なものを生のままよく洗って細切りにし、塩やにんにく、ごま、ごま油で和えて食べます。チョコチュジャン(とうがらし酢味噌)につけることもあります。

カンフェ(レバ刺し)
レバ刺し。
新鮮な牛レバー(肝臓)を生のまま一口大の薄切りにし、ごま油と塩を混ぜたものや、チョコチュジャン(とうがらし酢味噌)につけて食べます。

<熟膾[スッケ]>
チュクスンフェ(茹で筍の刺身)
茹で筍の刺身。
筍を茹でて薄切りにし、チョコチュジャンにつけて食べます。あるいは、さっと茹でた芹やにらも加えて、全体をチョコチュジャンで和えることもあります。

ミナリカンフェ(芹の巻きもの)
芹の巻きもの。さっと茹でた芹をくるくると巻いて作ります。
芹だけを巻くこともありますが、茹で牛肉や卵焼き、赤とうがらしなどをマッチ棒状に切りそろえ、1本ずつとって芹で巻くものが一般的です。チョコチュジャンにつけて食べます。

その他、いか(オジンオ:オジンオ ) や たこ(ムノ :ムノ)、てながだこ(ナッチ :ナッチ)、牡蠣 (クル :クル)、鶏( タッ:タッ)などをさっと茹でて熟膾[スッケ]にすることもあります。薄切りやぶつ切りにし、チョコチュジャンなどにつけて食べるほか、きゅうりや玉葱などの生野菜と一緒にチョコチュジャンで和えて食べることも多くあります。その場合、ムッチム( ムッチム:和えもの)あるいはフェムッチム(フェムッチム:フェの和えもの)ともいいます。
また、魚菜[オチェ] (オチェ:一口大に切った白身魚に粉をまぶしてさっと茹で、酢じょうゆなどにつけて食べるもの)や、冷菜[ネンチェ](ネンチェ )の中にも、ものによっては熟膾[スッケ]の範疇に入るものがあります。



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