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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
韓国でよく好んで食べられている魚介類に、「ナッチ」(手長蛸:てながだこ)があります。その名のとおり手(腕足)が長く、全長60〜70cmほどの中で、手の長さが胴体の約5倍もあります。
たこの仲間では、ほかに飯蛸(
:チュクミ)、水蛸(
:ムノ)なども韓国で食べられますが、ナッチはそれよりさらに身近で庶民的な食材。
刺身、炒めもの、煮もの、鍋ものなど様々に調理され、年間を通してよく食べられています。
ちなみに日本でもナッチはほぼ全域的に獲れますが、真蛸(
:チャムムノ)のほうが美味だといわれ、瀬戸内海沿岸以外ではあまり注目されていないようです。
逆に、日本で「たこ」といえば最も一般的な真蛸は、朝鮮半島ではほとんど食べられません。
ナッチの産地は朝鮮半島の西海岸〜南海岸にかけてで、特に全羅南道の木浦(モッポ)、務安(ムアン)、新安(シナン)などが名産地です。ナッチは近海の砂浜にもぐって生息しているため、他のたこの仲間に比べて捕獲しやすいと言われます。
また、ナッチの中でも特に美味だといわれているものに「セバルナッチ」
(
)があります。
これは、品種的には同じですが晩春〜初夏に獲れる幼いナッチのことで、
「セバル」
(
) とは「三本足」の意味ではなく、
「細い足」を意味します。大きさは成体の1/5ほどで、頭が小さく足が細長いのが特徴です。
セバルナッチは特にサンナッチ(
)
として食べられます。
さて、韓国でナッチが好んで食べられる理由には、味や食感もさることながら、滋養の高さが挙げられます。特に、春が産卵期のナッチは秋から冬にかけて体内に栄養を蓄えていくため、「秋のナッチ一匹は朝鮮人蔘一本と同じ」と言われるほど滋養が高いとされます。栄養素別にみると、タンパク質、ビタミンB2、無機質、疲労回復に役立つタウリンなどが豊富に含まれています。
調理方法としては、次のようなものがあります。
・ナッチポックム(
):ナッチの激辛炒め
玉ねぎやにんじん、ピーマンなどの野菜も一緒に炒め、コチュジャンをたっぷり入れて甘辛く真っ赤に仕上げる。また、これをご飯の脇にカレーライス状にかけて、ナッチトッパプ(
:ナッチ炒め丼)にもする。
・サンナッチ(
):ナッチの踊り食い
活きたナッチの足をぶつ切りにし、塩+ごま油、またはチョコチュジャン(とうがらし酢味噌)をつけて食べる。あるいは、足を切らずに長いまま箸にぐるぐると巻き、箸から抜くようにして食べる。口の中で吸盤が吸いつく感触と歯ごたえが身上。
・ナッチチョンゴル(
):ナッチ鍋
野菜、きのこなども加え、すきやき鍋のような浅い鉄鍋で甘辛く炒め煮にする。
・カルラッタン(
):
カルビとナッチを組み合わせて煮た鍋料理
「カルビナッチタン」の略語。
・ヨンポタン(
):ナッチのスープ
貝や野菜なども入れ、海鮮だしをきかせて塩、しょうゆ味であっさりと仕上げる。元来「軟泡湯(ヨンポタン)」といえば、「軟泡(ヨンポ)」すなわち豆腐のスープをさしていたが、海岸地方で豆腐のかわりにナッチを入れて煮たものが出回るようになると、逆にこちらの方が定着した。
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