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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
テンジャンチゲの「テンジャン」はみそ、「チゲ」は鍋料理を意味します。『韓国飲食―歴史と調理』 (尹瑞石/著、1980) によると、テンジャンチゲとは「米のとぎ汁にみそを溶いて火にかけ、きのこ、豆腐、青とうがらし、玉葱など季節に合わせてさまざまな材料を入れて煮たチゲ」となっています。
実際のテンジャンチゲのイメージは、日本のみそ汁よりも具だくさんでボリュームがあり、汁ものとおかずを兼ねたきわめて庶民的な料理といえます。家により地方により、あるいは季節により、具や味つけはさまざまですが、韓国の人々が毎日のように口にしながらも、サラリーマンの昼食メニューではキムチチゲと並ぶトップ人気を誇る、そんな料理です。
朝鮮半島の食事スタイルでは、ご飯に必ず添えられるのが汁もの、すなわちクッ
(
:スープ) またはチゲ (
:鍋もの) です。
中に入れる具材や味つけにより、さまざまなクッやチゲがありますが、中でもテンジャンチゲは、
ありあわせの材料で作れる手軽な料理でありながら、本当に美味しく作るのは非常に難しいといわれています。
美味しいテンジャンチゲといっても、美味しさの基準があいまいですが、一般にポイントといわれるのが、テンジャンすなわちみその味と、だし汁です。
韓国のテンジャンは、メジュ (
) といって大豆に麹菌を繁殖させたみそ玉を塩水に漬けて作るため、
豆が分解して生じるうま味と強烈なにおいが特徴です。
日本のみそでみそ汁を作るときは、香りが飛ぶのを防ぐため煮立たせずに沸騰直前で火を止めますが、
韓国のテンジャンの場合、汁に初めから入れてグツグツ煮込みます。
こうすることにより、香りが強く立ち、汁の味もこなれてくるわけです。また、テンジャンチゲのだし汁は、煮干しでとることが多いですが、
貝や干し海老、牛肉、豚肉などの具を入れる場合、そのうま味を上手に汁に煮出すことにより、
味に深みを出すことができます。
最後にテンジャンチゲの提供方法についてです。家庭でテンジャンチゲを作るとき、大きめの鍋で作ってから、
汁碗に銘々によそって食卓に出すのが一般的ですが、飲食店などでは初めから
トゥッペギ (
) という素朴な小型の土鍋で銘々に作り、グツグツ煮立っているところを食卓に出します。
そして、取り鉢などに取ることはせず、スッカラッ (
:スプーン) をトゥッペギに直に入れて食べるのが定番スタイルです。
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