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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
なつめにはいろいろな種類がありますが、韓国語でテチュ(
:大棗) と呼ばれるものは中国北部原産で、
中国〜朝鮮半島、日本に広く見られます。
朝鮮半島では古くから貴重な果樹としてなつめが
栽培されており、文献上では、宋の使臣が著した
『高麗図経』(1123年)に、五果として
「禽、青李、瓜、桃李、棗」が出てくるのが最古とされています。
なつめは初夏に花が咲いて結実した後、9〜10月にかけて実が赤褐色に熟します。完熟の実は甘酸っぱく、そのまま食べることもありますが、乾燥させてお菓子や料理の材料、あるいは漢方薬剤として多く使われます。
朝鮮半島では、なつめは子宝を象徴する縁起のよい食べものとして、冠婚葬祭の供物や賓客をもてなす食膳に必ずといってよいほど、乾燥なつめが使われてきました。
たとえば、
韓国では子どもの1歳の誕生日を「トル」
(
)
といって盛大に祝う習慣がありますが、その席で、
いろいろな品物
をお膳にのせて子どもがどれを手に握るかで
その子の将来を占う行事、
「トルチャビ」(
)をおこないます。
そのとき、お膳に墨や硯(学問を象徴)、お金(富)、糸(長寿)などと並んで必ず置かれるのが、なつめ(子宝を象徴)です。また、還暦祝いのときにも、松の実を差し込んだなつめを円筒形に高く積み上げたものを、「高拝床(コベサン)」の一つとして必ず加えます。
なつめの薬効をみてみると、呼吸器系、消化器系、循環器系のはたらきを高めるほか、神経を鎮静させて不眠症を軽減させる作用があります。また、いくつもの薬剤を調和させて副作用を緩和するはたらきがあることから、韓国伝統医学ではなつめを他の薬剤とともに配合したり、とりわけ相性のよい生姜と組み合わせることが多くあります。
どちらかというと、食品としてよりも薬効の高さが際立つなつめですが、韓国では韓菓(ハングァ・伝統菓子)や健康茶に、また料理のあしらいとして日常的に使われる食材でもあります。たとえば、次のような調理例があります。
・テチュチャ (
) : なつめ茶。
なつめを生姜とともに長時間コトコトと煎じて作ります。
こしてから、
好みで蜂蜜を加えたり、松の実を浮かべます。
「なつめ生姜茶」という意味で、テチュセンガンチャ
(
)
ということもあります。そのほか、インサムチャ
(
:高麗人蔘茶)
などの健康茶には、なつめを加えて煎じるものがあります。
・テチュチョ (
) : なつめの甘露煮。
なつめの種をぬき、蒸してから蜂蜜で照りよく煮上げます。シナモンパウダーを加えたり、仕上げに松の実のみじん切りをまぶしたりします。
・テチュキョンダン (
) : なつめ団子。
もち米粉をこねて丸め、ゆでた後、なつめの千切りをまぶします。
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