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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
チュオタン(
) はどじょうスープのことで、漢字で「鰍魚湯」と書きます。 どじょうは韓国語で「チュオ」(
)または「ミクラジ」(
)といい、どじょうスープは「ミクラジクッ」(
) とも呼びます。
チュオタンの作り方は地方により家庭によりさまざまですが、大きく分けると次のようなものがあります。
<全羅道(チョルラド)式>
どじょうを柔らかくなるまで煮てザルで漉(こ)し、硬い骨をとり除いたものをベースにし、茹でた青菜や白菜も加えてじっくり煮込みます。味噌やえごま粉を入れるのが特徴。別名「南原(ナムォン)チュオタン」。
<慶尚道(キョンサンド)式>
全羅道(チョルラド)式と同様に仕込みますが、味噌やえごま粉は入れず、唐辛子やにんにく、山椒などを混ぜ合わせたヤンニョムを、食べるときに各自で入れるところが特徴。
<ソウル式>
どじょうを漉(こ)さずに姿煮にし、葱やにんじん、きのこ、豆腐なども加えて仕上げるので、前述の二つに比べて見た目がにぎやかです。牛骨や牛内臓を煮込んだスープを混ぜ合わせるのが特徴。別名「チュタン」(
)。
チュオタンの主材料となるどじょうは、すぐれた健康食品。カルシウムの含有量は魚類でもっとも多いと言われるほどで、ほかにもタンパク質、鉄、亜鉛、ビタミンなどの栄養素や不飽和脂肪酸、コラーゲンなどの有効成分を多く含みます。チュオタンには、これらのすぐれた成分がスープの中に溶け出ているため、体内での消化吸収率もたいへん高いです。
朝鮮半島では古くから、滋養豊かな食べものを「補陽食(ポヤンシッ)」または「保養食(ポヤンシッ)」と呼び、夏場の体力が落ちたときや体調を崩したときに主に食べられてきました。補陽食(ポヤンシッ)には良質のタンパク質をはじめ、各種のすぐれた栄養成分がバランスよく含まれるため、これを食べると体が芯から温まり、各器官のはたらきが活発になって体が元気になるわけです。チュオタンはまさに補陽食(ポヤンシッ)の代表です。
高価で作る手間もかかる補陽食(ポヤンシッ)ですが、食べることがすなわち薬であるという「薬食同源」の考え方がここにあります。補陽食(ポヤンシッ)には、ほかに蔘鶏湯(サムゲタン)[高麗人蔘入り丸鶏のスープ]、補身湯(ポシンタン)[狗肉スープ] などがあります。
日本では夏バテ予防といえば「土用のうなぎ」ですが、韓国では「伏日の補陽食(ポヤンシッ)」 という食習慣の風景があります。
「伏日」 (
:ポンナル) とは、初伏(チョボッ)[夏至から数えて三度目の庚(かのえ)の日]、中伏(チュンボッ)[四度目の庚の日]、
末伏(マルボッ)[立秋後初めての庚の日] を合わせた「三伏(サムボッ)」の期間をさし、
一年中でもっとも暑さの厳しい時期にあたります。
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