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韓国の食文化について、伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ読み解いていきます。
いまや、日本でもすっかりおなじみになったお焼きの一種、「チヂミ」。日本で一般に「チヂミ」と呼ばれているものは、小麦粉などを水や卵でといた生地に葱やにら、にんじんなどの具を混ぜて油で薄く焼いたものをさしますが、本国・韓国のお焼きはもう少し多様なスタイルがあり、呼び方もいろいろです。
■チヂミの分類
韓国において、これらのお焼きは「チョン」 (
:煎) あるいは「〜プッチムゲ」 (
) と総称されていますが、具体的な料理名としては、材料や調理法により「〜チョン」
(
:前にくる単語の発音によってジョンと発音することもあり)のほか、「〜チヂミ」
(
) 、「〜チヂム」 (
) 、「〜プッチム」(
)、「〜トッ」
(
:トッは餅の意) などさまざまです。
これらのお焼きが日本で「チヂミ」という名で広まったのは、
日本に住む朝鮮半島出身者の多くが慶尚道
(キョンサンド)
地方の出身で、「チヂミ」が慶尚道方言であることに由来するようです。
さて、このお焼きの特徴を大きく分けると、(1)主材料(魚介・肉・野菜など) に小麦粉と卵の衣をつけ、ピカタ状に油で両面を焼いたもの (2)小麦粉や卵を混ぜ合わせた生地に刻んだ野菜などを入れ、お好み焼き状に薄く油で焼いたもの (3)じゃがいもや緑豆を挽いて生地を作り、具も入れるが、生地そのものを味わうもの などに分類することができますが、その中間のようなものもあり、地方による特徴もあります。
生地に入れる粉類では、
小麦粉のほかに米粉、もち米粉、そば粉、片栗粉などがあり、それらを混ぜ合わせて使うこともあります。
また近年では、それらを混ぜ合わせた「プッチムカル」(
:お焼き粉) が各種販売されており、
日本の「お好み焼き粉」「から揚げ粉」のように手軽に使われている現状です。
どの場合も、フライパンや鉄板に油を多めにひいてカリッと香ばしく焼きあげるのがポイントで、
焼きたてをヤンニョムチョカンジャン(
:薬味酢じょうゆ)
、またはヤンニョムカンジャン(
:薬味じょうゆ)
につけて食べます。
■代表的なチヂミ
では、代表的なものをいくつか挙げてみましょう。
・パジョン
(
) :葱のお焼き。
小麦粉や米粉、もち米粉の生地に、長めに切った青葱を並べて大きめに焼く。あさりや牡蠣、いかなどのシーフードを入れたり、とき卵をかけて仕上げたりする。熱したフライパンに生地を丸く広げ、その上に葱を並べて焼いたり、葱に生地をからませてからフライパンにのせて焼いたりする。シーフード入りの場合、ヘムルパジョン(
) ともいう。
・キムチジョン
(
) :キムチのお焼き。
葱やにら、生のとうがらしを具に加えることもある。小麦粉生地に具を混ぜてから焼く場合が多い。キムチチヂム(
) ともいう。
・センソンジョン
(
) :魚のお焼き。
鱈などの白身魚を使い、骨や皮を取り除いて薄く切り身にし、塩・こしょうをふって小麦粉と卵にくぐらせ、油で焼く。
・エホバッチョン
(
) :韓国ぼちゃ(ズッキーニ)のお焼き。
輪切りにした韓国かぼちゃを、鱈同様に焼く。
・ピンデトッ
(
) :緑豆のお焼き。
水につけて皮をとり除いた緑豆をミキサーなどで粉砕し、とろとろの生地を作って焼く。豚肉やキムチ、葱などを入れることが多い。別名ノットゥチヂム(
:ノットゥは緑豆の意)。
・カムジャプッチム
(
) :じゃがいものお焼き。
じゃがいもをすりおろし、ピンデトッ同様に焼く。カムジャチヂム (
) ともいう。
・チャントッ
(
) :コチュジャンや味噌で生地に濃いめの味をつけたお焼き。
具には青とうがらし、にら、葱、キムチなどを入れる。
■雨が降るとチヂミを焼く
これらのお焼きは、ご飯のおかずや酒の肴として、また少しボリュームのあるおやつとして、韓国で幅広く食べられています。
面白いことに、韓国では雨が降ると何となくこのお焼きが食べたくなる人が多いそうです。理由は、雨の湿っぽさ、肌寒さにより、カリッと油っ気のあるアツアツのチヂミが無性に食べたくなるのだとか、雨で買い物に出るのが億劫になり、ありあわせの材料でチヂミでも焼こう、という気持ちになるのだとか…
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