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韓国の食文化について、キーワードから読み解いていきます。
食文化の伝統から現代の習慣・行事にいたるまで、1テーマずつ紹介。
韓国料理の奥深さ、味の文化をお伝えします。
白餅。ヒントッ(
) は直訳すると「白い餅」という意味ですが、具体的にはうるち米で作ったカレトッ(
:棒餅)、およびそれをトックッ(
:餅スープ)用に斜め薄切りにした小判型の餅、あるいはトッポッキ(
:餅炒め)用の細長い鉛筆形の餅をさします。
いろいろな種類がある朝鮮半島の餅類の中でも、ヒントッは甘くないシンプルな味で、お菓子ではなく料理に使われる餅のひとつです。
■ヒントッができるまで■
朝鮮半島の餅類は、作り方によって「蒸し餅」(
:チヌントッ)、「搗き餅」(
:チヌントッ)、「手で形作る餅」(
:ピンヌントッ)、「油で焼く餅」(
:チヂヌントッ)に分かれます。
この中で「搗き餅」に分類されるヒントッは、
うるち米を水につけてから粉に挽き、蒸して搗いたものを機械で圧力をかけて押し出したものです。
機械から押し出される直径3〜4cmの棒餅は、長さ50cmほどのところで切って水に放します。
この棒餅がカレトッ(
)です。
できたてのカレトッは熱くて柔らかく扱いづらいですが、水につけておくと冷めて固くなり、薄切りにしやすくなります。
■お正月の食べものトックッ■
朝鮮半島では古くから、一部地域を除いてほぼ全国的に、お正月にトックッを食べる習慣がありますが、それには次のような背景があります。
餅の白色が、朝鮮民族が伝統的に好んでまとってきた白装束に通じるという考えです。白は自然、純粋、不浄、真実、聖なるものを象徴するとされます。もうひとつは、穀物の長である米こそが天からの最高の賜りものであり、その米で作った餅には精霊が宿るという、農耕民族的な観念です。この聖なる餅を年の初めに食べることで、見も心も清らかに一つ歳をとる、という意味があるわけです。
トックッ
■トックッの歴史■
では、いつごろからトックッが食べられていたのか、トックッが出てくる最古の文献『京都雑志』(1700年代末)には、「うるち米で餅を作り、搗いてこねて一本にする。固まるのを待って横に切るが、薄さは貨幣ほどである。それを煮て雉肉、胡椒などを入れると、正月料理になくてはならないものになる。そして、年をひとつとることを、トックッ何杯目を食べたか、と訊く」と記されています。
また、李朝時代の歳時風俗書『東国歳時記』(1849年)には、「白餅を銭形に切り、汁に入れて煮た」という記述があります。
トックッは古く「湯餅(タンピョン)」といい、中国ルーツの食べものでした。中国の「湯餅」はもともと、小麦粉をこねた生地を使ったスープ料理の総称で、その系列をくむ韓国の湯餅も、かつてはもう少し概念の広いものでした。
『才物譜』(1807年)には「湯餅は細く切った焼餅をスープに入れたもので、ククスである」と記され、『名物紀略』(1870年)には「湯餅、タンピョン、湿麺。小麦粉の生地を煮たものすべてを湯餅という。 (略)元旦に白餅をスープで煮たものだけをトックッと呼んでいるが、 これは誤りである」と記されています。このように、穀物の粉をこねた生地を「餅」といい、それをスープで煮た料理を「湯餅」と呼んでいたものが、次第に材料や形態によって「トックッ」、「ククス」(麺)、「スジェビ」(すいとん)、「マンドゥクッ」(スープ餃子)などに枝分かれし、現在に至っていることがわかります。
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